子どもに「それはやっちゃダメだよ」と強く言い聞かせても、なかなか言うことを聞いてくれない時があります。
なぜ子どもはやってはいけないことをしたがるのでしょうか?その理由を紹介します。
子どもに「ダメ」と言っても聞かない理由
大人は子どもに対して「あれはだめ」「これはだめ」と言ってしつけることは多いでしょう。でも、なかなか言うことを聞いてくれなかったりするものです。
ところが、よく考えてみてください。大人だって「ダメ」といわれると、やりたくなったり見たくなったりしませんか?
「上映禁止」の映画が見たくなる
「上映禁止」や「閲覧注意」などと書かれた映画や映像作品などに、なんだかとても興味を持ってしまいます。これを「カリギュラ効果」と言います。
1980年に公開された、ローマ皇帝のカリギュラを主人公とした映画があります。カリギュラは容赦なく家来を殺す暴君として悪名をとどろかせました。そんなカリギュラの生涯を描いたこの映画は、あまりに残虐なシーンや性的なシーンが多いとの理由で、アメリカのボストンで突然上映禁止となったのです。
ところが、この「上映禁止」というキーワードが人々に強烈なインパクトを与えました。禁止されたことによって、「どうしても見たい」という心理的欲求が爆発されたのです。結果として、ボストン市も映画を解禁せざるを得なくなりました。映画「カリギュラ」は大ヒットとなり、しかも観客からの評価は異常なほど高かったのです。
これがきっかけでカリギュラ効果と言われるようになりました。「禁止」されることによって、興味がわきたてられるだけでなく、魅力的に見せてそのものの価値までをあげてしまう効果があるのです。
禁止されたおもちゃで遊びたくなる
「禁止」と言われるほど興味を示すのは、大人でも子どもでも同じようです。
幼い子どもが「このおもちゃでは遊んではいけません」という「禁止されたおもちゃ」にどれほど関心を示すか、という実験が行われています。
この実験では、3歳から5歳の子どもたちにたくさんのおもちゃが用意されます。そしてその中の一つに「このおもちゃは絶対に触ってはいけない」と、禁止されたおもちゃを設定します。ただしこのおもちゃは、取り上げることなくその場においておきます。つまり、子どもの視界にはいつも入っており、触ろうと思えばいつでも触れる状態にあるということです。どの子どもも、禁じられたおもちゃに興味を示しますが、「触ってはいけない」と言われている手前、実際に手を伸ばす子どもはほとんどおらず、我慢するケースがほとんどでした。
さてその後です。「もうどれでも好きなおもちゃで遊んでいいよ」と禁止を説くと、子どもたちは「禁止されたおもちゃ」によって行きます。さらに数日後、「あの中で一番欲しいものをあげる」と言うと、全員が「禁じられたおもちゃ」を選んだのです。
「ダメ」と言われると、興味がわき、しかもそれが魅力的に見えて仕方がないという。これは人間に備わっている本能なのでしょう。
反発心は人間の証
心理学では好奇心にもとづく反発心のことを「心理リアクタンス」といいます。やめろと言われてもやめられないのが人間であり、ほとんどの人にこの心理が備わっています。
自分のことは自分でしたい
人間は「自分のことは自分で決めたい!」という本能を遺伝子レベルで持っているといわれています。好き嫌い、やるやらない、など自分のする行動は自分で決めたいという欲求を持っているのです。
つまり、「ダメ」と言われたら、やらないということを自分で決めていないので反発心が起きるということです。また逆に「やりなさい」と言われたら、やるということを自分で決めていないのでやりたくなくなるということになるのです。
自ら決めることが人間の人間らしさである
自分のことは自分で決めたいのが人間です。
この本能があるからこそ、好き嫌いや得手不得手を選択し、自発的に学ぶことができて、その結果として高度で想像的な文化を築くことができたのではないかともいわれています。人間にとって自分のことを自分で決めて行動することは、人間にとっての人間らしさであるともいわれるのです。
だから、他人から「ダメ」と禁止されることは、その人の人間らしさを脅かされることになり、それがストレスの発症にもつながりかねないことになるのです。
まとめ
「なんで子どもは言うことを聞いてくれないんだろう」と思うことがよくあると思います。しかしこれには、言われたことと反発したくなるという人間の心理や本能が関わっているのです。
よくよく考えてみてください。「ダメ」と言われると余計にやりたくなるのは、大人も一緒でしょう?そういうものだと受け入れるところから始めましょう!