悪いことをすればこの世でもあの世でも苦しむ

仏教

ブッダの教え『ダンマパダ(法句)』について、ここでは「第一章」にある法句17について、その内容を紹介します。

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悪いことをすればこの世でもあの世でも苦しむ

悪行の者はこの世で苦しみ あの世で苦しみ、両世で苦しむ

「私は悪をなした」と苦しむ 悪道に行き、さらに苦しむ

「法句17」

デーヴァダッタのものがたり

この法は、ブッダがジェータ林(祇園精舎)に住んでおられたとき、デーヴァダッタについて説かれたものです。

あるとき、シャカ族のバッディヤ、アヌルッダ、アーナンダ、バグ、キンビラ、デーヴァダッタという六人が出家しました。やがて長老のバッディヤは三明者となり、アヌルッダは天眼をそなえて阿羅漢となり、アーナンダは預流果にとどまり、バグとキンビラは阿羅漢となりましたが、デーヴァダッタだけは凡夫の神通力を得るにとどまりました。五人の比丘らには利得と尊敬が集まってきましたが、デーヴァダッタには何も集まりませんでした。

そして嫉妬してしまったデーヴァダッタは、ビンビサーラ王の子どもであるアジャーサットゥに近づいて、その利得と尊敬を獲得に成功しました。そこでブッダのもとへと行き、「世尊は今やご高齢です。お楽になさってください。比丘僧団は私が導いてまいります」と言いました。

ブッダはこれを聞いて固唾をのむ言葉でデーヴァダッタを叱責し、この願いを退けられました。この時以来デーヴァダッタは、ブッダを憎み、殺して亡き者にしようとしました。

最初はアジャーサットゥに対しても「あなたは父であるビンビサーラ王を殺して王になってください。私はブッダを殺して僧団を率いるものになります」と話し、つぎつぎと刺客を送ってブッダを襲わせました。しかし、この方法はことごとく失敗したのです。

二度目は、自ら山に登って岩を落とし、ブッダの身体を傷つけて血を流させました。

三度目は発情期のゾウを放ちましたが、アーナンダの献身的な行為によってゾウが調御されたことで、デーヴァダッタの企ては崩れ去りました。

さらにはまた、「出家者は生涯、森に住むべし、托鉢食によるべし、糞掃衣をつけるべし、樹下にすむべし、魚・肉を食べるべからず」という根本の、しかも極端の「五箇条」をもって僧団の分裂を試みましたが、これもサーリプッタとモッガラーナにこばまれ、失敗に終わりました。

やがてデーヴァダッタは病気になり、最後にブッダにお会いして詫びたいと思い、弟子たちに連れられて旅に出ました。途中、蓮池で沐浴をしようとしたところ、なんと足が大地に沈み始めたのです。くるぶし、膝、腰と順番に沈んでいき、胸、首、そしてまさに顎の骨が沈もうとするとき、かれは「私はブッダに帰依いたします」と唱えて、無間地獄に落ちていきました。

これがこの因縁話です。

悪いことをすれば自分が苦しむ

いいことをすれば自分にいいことが返ってきます。また悪事を働けばその報いを受けることになります。

悪を行えば、その業の報いによって苦しみ、その憂いによって「この世で」苦しみます。

また死後は悪業の報いによる苦しみを受けて、苦しみの世界に生まれて「あの世で」苦しみます。

ところで、デーヴァダッタは極悪非道の人であったといわれています。ブッダは、なぜそのような人を出家させたのでしょうか。

それは、出家をすればたとえ極悪非道で重罪を犯した人であっても、その罪を償い、いい人格が生まれ、よき未来が期待できるからに他なりません。

どんな人であっても、縁さえあればよき人間にも悪い人間にもなりえるのです。

この偈は法句17と対になっています。あわせてお読みください。

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