自分の心を守ること

自分の心を守ること『ダンマパダ』36 仏教

ブッダの教え『ダンマパダ』について、ここでは第3章「心」にある法句35について、その内容を紹介します。

自分の心を守ること

まことに見がたく、微細にして

欲するところへ降りてゆく

心を慧者は守るべし

心は守られ、楽をもたらす

法句36

ある不満を持つ比丘の物語

この法は、ブッダがサーヴァッティ(舎衛城、祇園精舎)に住んでおられたとき、ある不満を持つ比丘について説かれたものです。

伝えによると、そのとき、ある長者の息子が自分の家に来る長老に近づいて、このように言いました。

「尊者よ、私は苦しみから逃れたいと思っております。私に苦しみから逃れる様相をひとつ語ってください」と。

長老が言いました。

「よろしい、友よ。もしあなたが苦しみから逃れたいと思うなら、籤食(せんじき・くじ引きによる食事の施し)や、衣などの必需品を施すことです。そして、自分の財産を三つの部分に分けて、ひとつで家業を営み、ひとつで妻子を養い、一つを仏に施しなさい」と。

長者の息子はそのとおりにしました。そこで長者にたずねました。

「尊者よ、これからさらにすべきことはありませんか」と。

長老は、三帰依と五戒を受けるように、つぎに十戒を受けるようにと言いました。

そのようにして、長者の息子はつぎつぎに功徳を積んだことから、「順次に行う長老の息子」と呼ばれるようになりました。

次には出家するようにと言われ、とうとう出家しました。

やがてかれは、いろいろな質問をしているうちに「この仕事は負担が大きい。家にいても苦しみから逃れることができる。在家のほうがいい」と思い、不満のために説法も聞かなくなって、痩せ衰えてしまいました。

ブッダはそのことを知り、かれにこのように言いました。

「比丘よ、もしもただひとつのことを守ることができるならば、そなたは他のことを守る必要がありません。それは自分の心のみを守ることです」と。

そして、この偈を唱えられました。

その後、その比丘は預流の境地を得たといわれています。

これがこの因縁話です。

自分の心を守る

ものごとのすべては、心が作り出しています。

喜びも悲しみも、楽も苦しみも、心が生み出しているものです。

愚かな人は、自分の心を制御することができず、また心を守ることができません。それゆえに、心に支配され、破滅にいたるのです。

しかし反対に、賢い人は自分の心を制御して、また心を守っていくことができます。

ブッダが悟りを開いたのは、このようにして自分の心を自在にコントロールし、煩悩から心を守ったところにあります。

行動し、修行の実践に励むことも大事なことです。しかし、修行の本来の目的は、心をコントロールし、守っていくことです。

悩み苦しみから解放されたいならば、心を正しく守っていかなければいけません。

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