大切な家族が亡くなったとき、故人を偲び、供養をするためにお葬式をつとめます。
しかし、悲しみに暮れる中でお葬式を執り行っていくことはとても大変なことです。しかも時間が限られているのでゆっくり考える事ができません。
その結果として、トラブルが発生するということが少なくありません。
気持ちよく、安らかに故人を見送るためにも、トラブルはできる限り避けたいものです。
その中でも特に問題となるのが、お金に関わることです。
ここでは、よくあるお金に関わる問題を取り上げて紹介します。
また、経験者アンケートでわかった家族葬の費用の実態も紹介しているので、こちらもご覧ください。
お葬式とは
そもそもお葬式は「葬儀式」といい、死者を葬るための儀式です。
家族が亡くなると、
- 枕経
- 納棺
- 通夜
- 表葬式(葬儀)
- 告別式
- 荼毘会式(火葬式)
- 収骨式
- 埋葬式(納骨式)
などの儀式が執り行われます。これら一連の儀式を合わせて葬儀式といいます。
それぞれの宗教宗派の教義によって死者を葬り、儀式を執り行うことによって、故人を偲び供養するとともに、遺族の心のケアを行うのです。
関連:【お葬式は本当にいらないのか?】やるべき大切な理由とは?
お葬式に関するお金の問題
お葬式には多額の費用がかかるといわれています。
そのため近年では簡素化され、家族葬や直葬、火葬式をするケースが増えてきました。
しかし、トラブルがつきることはありません。その理由には、次のようなことがあげられます。
- 経験がない
- 知識がない
- 情報がない
- 時間がない
- 余裕がない
家族葬が増え、ご近所同士でお葬式の手伝いをすることが減りました。また、遠い親戚を呼ぶということも少なくなり、本当に近しい家族でのみお葬式をすることが多くなりました。
そのため、お葬式そのものに関わることがほとんどなくなっています。結果として、お葬式に関する知識や経験がほとんどありません。
また、突然の別れで心が落ち着かない中であるにもかかわらず、たくさんのことを決めていかなければいけません。それにはあまりにも時間的にも精神的にも余裕がありません。
このようなことから、遺族と葬儀社の間でトラブルが発生することがあります。
特に、消費者センターに問い合わせがあるお葬式に関するトラブルのうち、そのほとんどがお金に関することであるといわれています。
意外なところでかかる費用
知識も経験もなく、時間的にも精神的にも余裕がない中で準備をしなければいけないお葬式。
実は「こんなところにもお金がかかるの?」と驚くことが多く、知らない間に費用が重なっていると感じるところに、トラブルの要因があるのです。
心安らかに、そして心静かに亡き人を送るためにも、知っておきたい意外なところでかかる費用を紹介します。
死亡証明書はタダじゃない
死亡証明書はタダではありません。
人が亡くなったことを証明する「死亡証明書」
この書類がないと、そのあとに火葬する許可書がもらえません。
つまり、死亡証明書がなければお葬式もできないということです。
また、戸籍のうえでも死亡したことにならないので、遺産などの相続の手続きができません。
また所得税や住民税などの課税関係も、そのまま継続されてしまうことになります。
死亡診断書は必ず書いてもらうようにしましょう。
ただし、この書類はタダではありません。
平均的に一通5,000円程度。
また、金額の設定も病院の自由なので、その差には広がりがあるといえるでしょう。
「自宅で死を迎えたい」時の注意
「住み慣れた自宅で死を迎えたい」と考えている人には、思わぬ出費が生じることを知っておいた方がいいでしょう。
自宅で亡くなった場合、医師が死体に対して、死亡を確認したり、死因や死亡時刻、異常死かどうかなどを総合的に判断します。
この時に作成されるのが「死体検案書」とよばれる書類です。
病院でなくなる場合は医師の診察のもとにあるので、これらの詳細は明らかですが、自宅などの病院以外の状況にあるとはっきりとわかりません。
そこで、自宅などで死亡したときはかかりつけの医師や指定医が呼ばれて、死体の検案をすることになります。
この場合、指定医は時間帯に関係なく呼ばれることになるので、時間外手当や往診料、診断書発行量など、さまざまな追加料金がかかることがあり、割高になる傾向があります。
この費用も医師によって違うので、金額に幅がありますが、平均で7,000円、最高で63,000円という調査結果もでています。
病院が紹介する葬儀社は高い
一概に全部がそうであるとはいえませんが、「病院が紹介する葬儀社は高い」といわれます。
亡くなる人の約8割は、病院でそのときを迎えています。
病院は、実は葬儀社にとってはお金を生み出すための魅力的な窓口です。
病院が葬儀社を紹介し、紹介された葬儀社はご遺体を引き取って、お葬式を行います。その際葬儀社は、一体につき数万円のキックバックを支払っています。年間で見てみると、100万円以上支払っている葬儀社もあるという調査があります。
また、病院の近くに従業員をつねに待機させるようであれば、その分の人件費などのコストもかかってきます。
これらの葬儀社が支払った費用は、すべて病院で紹介される遺族の葬儀費用に上乗せされているのが事実です。
「病院が紹介する葬儀社は高い」といわれる理由は、こういうところにあるのです。
このような問題に対応するために、葬儀社は前もって準備しておいた方がいいでしょう。
死化粧は自分でできる
遺体の顔や髪の毛を、見苦しくなく整えて化粧をすることを、「死化粧」といいます。
湯かんをしたあと、例えば病気で頬がこけていれば脱脂綿を含ませたり、女性では薄く化粧を施したり、男性の場合はひげを剃ったりします。
人は亡くなってしまうと、血流が止まり顔色が悪くなってしまいます。故人の顔をきれいに拭き清めて、お化粧を施すことで、生前の様子をたもったままお葬式を迎え、故人を送ることができるのです。
死化粧は、専用の化粧品を必要とする場合もありますが、故人が生前に使っていた化粧品を使っても十分に対応できます。
つまり、遺族が自分で死化粧を施すこともできるということです。
もし葬儀社に死化粧を依頼すると、5万円から9万円程度の費用がかかる場合があります。また、からだ全体をふいて清らかにする「湯かん」をすると、別途5万円程度かかります。
きれいな身体、きれいな顔、きれいな姿で送りたいという気持ちは大切ですが、その分費用もかかってくることを知っておきましょう。
寝台車、霊柩車
「寝台車」は遺体を病院から自宅や葬儀場に運ぶための車のこと。
「霊柩車」は、ご遺体を納めた棺を葬儀場から火葬場まで運ぶ車のこと。
移動料金などは、葬儀社が独自で決めるので、金額は葬儀社によってまちまちです。一般的に2~3万円程度。
特に霊柩車になると、車両の形やタイプによって金額にも大きく差が出てきます。今では少なくなりましたが、金色の祭壇が付いている輿型の霊柩車になると、金額が大きくなることは間違いありません。
遺体の安置と保管
遺体は火葬するまでにきちんと安置し、保管していなければ、腐敗して大変なことになってしまいます。
そのため、特別な場所で一時的に保管したり、ドライアイスなどで遺体を冷やして腐敗を遅らせるなどの処置を施す必要があります。
当然、ここにも費用がかかってきます。
しかし、ここでも気をつけなければいけません。
費用を安く抑えようとしすぎたために、故人とゆっくりお別れできないというケースが発生することがあります。
葬儀社にとって、遺体を一カ所に集めて管理をした方がコストが安く抑えられます。そのため、「預かります」と言って遺体をそのまま持って行かれてしまい、お別れをする時間がとれなかったというのです。結局、火葬場での10分しか、お別れの時間がなかったといいます。
「お葬式の費用が安い」の裏には、遺族には知らない葬儀社の運営上の都合もあります。しかし、そんなことは普通、知らないのが当たり前です。
こうした認識の違いから、トラブルが生まれやすいのです。
お葬式以外のところで発生する費用
お葬式の代金以外のところでも、費用が発生する場合があることを知っておきましょう。
- 心付け
- お礼
- お布施
心付け
スタッフや運転手に渡すお礼のこと。海外でいえばチップにあたります。
義務ではありませんので、必ずしも心付けを渡す必要はありません。
ただし、昔からの習慣で心付けを渡すことが当たり前と思っている親戚の人や、地域の人がいる場合があります。
具体的な金額が決まっているわけではありません。しかし「気持ちだから中身はいくらでもいい」というわけにもいきません。
式場の人、地域のお世話役の人、お手伝いの人には5,000円~10,000円
火葬場、寝台車・霊柩車の運転手には5,000円
ハイヤーやバスの運転手には5,000円
火葬場の係員には3,000円
料理を配膳してくれる人、係の人には3,000円
などが相場とされています。
すべてはご遺族の気持ち次第ですが、心付けというものがあることを知っておきましょう。
お礼
最近は香典を受け取らないケースが増えてきましたが、香典をもらう場合にはお返しをしなければいけません。
「香典は半分返し」といわれるように、もらった金額の半分を目安にお返しするのが一般的です。
しかし、この常識は「もらったらお返しなければいけない」という人間の心理によって近年になってから定着したものです。
もともと香典は「故人に手向けるお香」を意味し、お線香などのお香を供養としてお供えするところから始まっています。
昔は近所付き合いなどが盛んにおこなわれ、お葬式に参列することも当たり前のように行われていました。
そのため「香典をもらった人の家でお葬式があった場合は、こちらから香典を持っていく」というふうに、お互い持ちつ持たれつの関係を築いていたのです。
つまり、香典は本来もらったらもらいっぱなしでいいものなのです。
それが時代とともにお金に変わり、「お金をもらうからお返しをしなければいけない」という考えがうまれ、現在の「香典は半分返し」へと形を変えていきました。
現在は、香典返しをしないのはマナー違反としてとらえられます。
意外と大きな出費になりますが、香典をもらう場合は、香典をもらったらお返しをするようにしましょう。
お布施
お葬式の費用の中でいちばんあやふやな費用が、お布施ではないでしょうか。
お布施は本来、出家修行者や仏教教団に対して何かしらのモノを施し与えることをいいます。
よく「読経に対するお礼」という説明がされますが、それは間違いです。お布施はお坊さんの読経やお葬式の導師をしてもらったときの対価ではありません。
対価ではないので、「お気持ちで」という言葉をよく使うのです。
しかし、お気持ちがどれくらいか知りたいというのが本音だと思います。
お布施をいくら渡せばいいかわからない時は、遠慮せずにお坊さんに聞くようにしましょう。
関連:お布施の本当の意味とは?お布施の相場の前に知っておくべき大切なこと
最後に
お葬式の時におこるトラブルのうち、そのほとんどがお金に関することです。
大切な家族を亡くし、心安らかに送ってあげたくても、こうしたトラブルに巻き込まれてしまうと、あとになって悔やんでしまう気持ちが大きくなってしまいます。
「もしも」のことは突然やってきます。そうなると、時間的にも精神的にも余裕がなく、ゆっくりと考えることができません。
今のうちに気をつけて確認し、準備しておくようにしましょう。