【やってはいけない!子どものほめ方】

生活

近年、ほめる教育と称して子どもに対して怒ることなくほめることが進められています。しかし、ほめ方には注意しなければいけません。ほめ方を間違えると、子どものやる気をそぐことにもなりかねません。

やってはいけない!子どものほめ方

皆さんは子どもをほめる時、どんな風にほめているでしょうか?実はそれ、子どものやる気をそいでいるかもしれませんよ?

二種類のモチベーション

「せっかくやろうと思ってたのに、その一言でやる気がなくなった」とか、「今までやってきたけど嫌になった」という経験はありませんか?こういうのはどんな時に起こるのでしょうか?

人間のモチベーションには二種類あります。一つは外発的モチベーション、もう一つは内発的モチベーションです。

外発的モチベーションとは、頑張ることで物質的な報酬や評価を得ようとする意味での意欲のことです。「仕事をすれば給料を貰える」「テストを頑張ればご褒美をもらえる」と言ったものがこれにあたります。

内発的モチベーションは、やっていることに対して充実感を得たり面白さを感じたりするところから頑張ろうとする意味での意欲のことです。「もっといろんなことが知りたい」「大好きな教科がある」といった、報酬とは関係なしに湧き起こる意欲がこれにあたります。

そして、人間は一般的に内発的モチベーションによって動いているときのほうが、集中力が高く、失敗もしにくく、よい結果を出すことが分かっています。

心理学者の市川伸一の調査によっても、「テストでいい点を取るため」「ゲームを買ってもらうため」のように報酬をもらうために勉強している子どもよりも、「大好きな教科がある」「物知りになりたい」という内発的モチベーションで勉強している子どものほうが、圧倒的に高い集中力を維持しながら、効果的な勉強方法をとっていることが分かっています。

やる気がそがれる瞬間とは?

内発的モチベーションが、やる気の維持継続に大きく貢献しています。司会s、内発的モチベーションが、外発的モチベーションにシフトダウンしてしまうことで、一気にやる気がそがれてしまう場合があります。

それは、内発的に頑張っているところに、外発的な叱咤激励が与えられたときです。やりがいを感じて、報酬を度外視してまで勉強や仕事に取り組んでいるときに、にわかに物理的な報酬を与えられてしまうと、今後は報酬なしで頑張ることに対してバカバカしくなってしまうのです。

むやみやたらに誉めてはいけない

つまり、内発的に頑張っている子どもに対して「えらい!」とむやみやたらとほめたり、「頑張れば一番になれる」とか言うことは危険なことなのです。心のどこかで「余計なお世話だ」と心理的な反発心が起こって、せっかくの内発的モチベーションに水を差すことになる可能性があるのです。

「昔はよかったのに今は嫌い」とか、「言われたから嫌になった」と言うのは、こういう心理が働いているのです。

誰かのために頑張るのではなく、自分が好きでやっている。という気持ちを持ち続けられることが、やる気を長く続けるために必要なことなのです。

やる気を最大限に引き出すためにはどうするのか?

それでは、子どものやる気を最大限に引き出すためには、どのようにすればいいのでしょうか?

効果的な報酬の与え方

アメリカの心理学者であるエドワード・デシは、こんな実験をしています。

大学生を二つのグループに分けて、パズルをやらせました。その時、一つのグループにはパズルを解くと報酬として1ドルもらえるが、もう一つのグループはいくつ解いても報酬はもらえません。そしてデシは、両方のグループに同じ時間の休憩時間を与えました。その休憩時間に大学生が何をするのか、こっそり観察したのです。

すると、報酬を与えられたグループの大学生は、休憩時間になるとパズルをやめて寝そべったり雑誌を読んだりして時間をつぶしました。その一方で、報酬を与えられなかった大学生は、何をしてもいい自由な時間であるにも関わらず、一生懸命にパズルを解いて楽しんでいたのです。

報酬を与えることで、かえってものごとへの関心が薄れてしまい、結果的にやる気がなくなっていってしまうのです。

お金を渡して自分を守る!?

デシはこんな面白い寓話も紹介しています。

ある町で一人の男がお店を開きました。そこに、嫌がらせをする不良グループがやってきて、店の前で大暴れして商売の邪魔をします。そして不良たちは、店を開いた男をこの町から追い出そうとしたのです。ところがその男、何を思ったのか不良たちに10セントを与えたのです。
次の日も不良たちは喜んでやってきて、大暴れをします。すると男は「今日は5セントしかあげられない」といって、不良たちに5セントを与えます。
また次の日、喜んでやってくる不良たちに「今日は1セントしかあげられない」1セントを渡そうとします。すると不良たちは「1セントだけでは大騒ぎなんかできない」と怒って帰っていってしまったのです。
結果として、男は店を守ることができました。

これは例え話なので、もちろん困ったときにはお金で解決しろというわけではありません。これは、一度報酬を与えてしまうと、人間は何のために行動しているかが見えにくくなる、という心理を表しているのです。

まとめ

子どもは生まれてきたときは意欲に満ち溢れて、やる気満々で生まれてきます。ところが、周りが与える環境によって、その意欲が薄れてしまう危険があります。

こどもをほめる時、むやみやたらとほめることは、かえってやる気をそいでしまう結果になることがあるので注意が必要です。

内発的モチベーションで行動しているときは、そのものごとの本質を楽しめるように見守っていくことが大切なのです。

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