ブッダの教え『ダンマパダ(法句)』について、ここでは「第一章」にある法句18について、その内容を紹介します。
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善を行えば楽を受ける
善行のものはこの世で歓び あの世で歓び、両世で歓ぶ
「私は善をなした」と歓ぶ 善道に行き、さらに歓ぶ
「法句18」
スマナデーヴィーのものがたり
この法は、ブッダがジェータ林(祇園精舎)に住んでおられたとき、スマナデーヴィーについてとかれたものです。
布施第一の仏陀の弟子であるアナータピンディカ長者の家では、毎日、二千人の比丘たちに食事の布施をしていました。その世話を、長女のマハースバッダーがすることになりましたが、預流の境地を得ると、嫁いでいきました。そこで次女のチューラスバッダーが世話をすることになりましたが、彼女も預流の境地を得ると、嫁いでいきました。
そこで、三女のスマナデーヴィーが世話をすることになりました。やがて彼女は一来の境地を得ました。しかし、娘として家にとどまり、その後病気になり、食べ物を断るようになりました。
父親に会いたくなったスマナデーヴィーは、遣いを出して来てもらうと、父親は言いました。「スマナーよ、どうしたのか」と。すると彼女は言いました。「何ですか、弟よ」と。
父親は驚いて彼女に尋ねました。「おまえ、何を寝言を言っているのだ」と。スマナデーヴィーは言いました。「寝言など言っておりません、弟よ」
「おまえ、恐れているのか」と聞く父親に対し、「私は恐れていません、弟よ」と答えたスマナデーヴィーは、そのまま行きを引き取ってしまいました。
アナータピンディカは預流の境地を得ていましたが、悲しみをこらえきることができずにブッダを訪ねました。ブッダは話を聞いてこのように言いました。
「スマナデーヴィーは一来の境地にあり、これは悟りの境地からすればそなたよりも年長にあたります。そなたは弟にあたります。だからそのような言い方をしたのです。この世では親族と幸せに暮らし、今は天界に生まれ変わっています。怠りなく努力する者は、在家者であれ出家者であれ、この世とあの世において歓ぶのです」と。
これがこの因縁話です。
善を行えば楽を受ける
いいことをすればいいことがあります。悪いことをすれば悪いことが自分に返ってきます。
この物語は、いいことをした結果として、楽の果報を受けた象徴的なお話です。
ものごとはすべて、因果の法則の上に成り立っています。
すなわち、善因善果、悪因悪果です。
普段からいい行いをしている人は、この世でもその果報を受けていいことがあり、命つきた後にはその果報によっていいところに生まれ変わり、楽を受けて喜びの中にいるのです。
この偈は法句17と対になっています。あわせてお読みください。