近年、増え続けている「墓じまい」
跡継ぎがいなくて、自分の代で途絶えてしまう
実家の墓が遠くて管理が難しい
などの理由で、墓じまいをする人が急増しています。
しかし、簡単にできてしまうからこそトラブルも起きやすくなってしまいます。
私の身近でおこった墓じまいのトラブルを紹介します。
相談せずに墓じまい
墓じまいでトラブルに・・・
仕事がら、お墓のことに関する相談を持ちかけられることがよくあります。
先日、ある70代の男性が、お墓のことについて相談にやってきました。
「私には息子がいますが、仕事の都合で遠く離れて、あまり実家には帰ってきません。しかも、結婚もしていないし、する気もないようなので、息子の代で家系が途絶えてしまいます。今のうちに墓じまいをして、息子の負担を減らして起きたいのです」
という内容でした。
希望通り、墓じまいをして、取り出したお骨はお寺の合祀墓へと埋葬し、もとあった墓地はきれいさっぱり更地に戻してしまいました。
このような相談は年々増えてきています。
話を聞いてみると、多くの方が「子どもや孫の代にまで迷惑をかけたくない」「負担をかけさせたくない」というのです。
この男性も、墓じまいの大きな理由が「息子に負担を少しでも減らしたい」ということでした。
ところが、思わぬトラブルが起こってしまいました。
子どもや周りの親戚に相談することなく、墓じまいをしてしまったのです。
遠く離れた息子が、お盆の休暇で久しぶりに実家へ帰ってきたとき、お墓参りに行くとお墓がない。そこで初めて、男性が墓じまいをしたことを知ることになったのです。
男性は息子に負担をかけたくないという思いで墓じまいをしましたが、息子はお墓を守っていくことを何の負担とも思っていませんでした。
「お墓には、大好きだった死んだおじいちゃんやおばあちゃんが眠っている。会ったことは無いけど、ひいおじいちゃんやひいおばあちゃん、ご先祖様がここで眠っている。自分で代が途切れるかもしれないけど、できる間は自分がお墓を守っていきたい」
息子さんはこのように考えていたそうです。墓地に行くとお墓がないのに気づき、ショックで仕方がなかったといいます。
そしてそのあと、男性の妹や弟のところにもこの情報が届きます。
妹は嫁いでいるので名字も変わっていますが、嫁ぎ先の家族とあまり仲がよくなかったようで、「夫の家系のお墓には入りたくない、実家の墓に入りたかった」とのこと。
さらに弟も、結婚はしていますが子どもがいないので、「自分が亡くなったら実家の墓にいれてもらいたいと考えていた」といいます。
合祀墓に納めたあととなっては、もはやお骨を取り出すことはできません。
男性も息子も、周りの親戚たちも、やりきれない気持ちだけが残ってしまいました。
子どもや周りに負担をかけないようにと選んだ「墓じまい」ですが、これによって思わぬトラブルになってしまったのです。
必ず周りに相談するように
私は墓じまいの相談を受けたとき、必ず、ひとりで決めることなく、周りの人に相談してから決めるようにと話をしています。
特に、「子どもや孫に迷惑をかけたくない、負担をかけさせたくない」という場合、その子どもや孫にきちんと話をしておくようにと伝えています。
自分自身は、次の世代に負担をかけさせたくないと思っていても、子どもや孫は「お墓は自分が守っていく」と考えている人も、まだまだたくさんいます。
なかには「それはお墓を守ることの大変さがわかっていないから言えること」という人もいますが、どれほど大変かは当人たちが自分で気づいていくものです。
お墓は自分が亡くなってから入る場所であると同時に、残された人が個人を偲び、祀り、手を合わせて供養する場所でもあるのです。
相談せずに墓じまいをすることは、厳し言い方をすれば、残された人が手を合わす場所を奪ってしまっていることになるのです。
この10年で、墓じまいの件数は1.7倍にも増えたといわれています。同時に、「墓じまい」に関するトラブルも年々増加する一方です。
特に、「相談せずに墓じまいをした」場合におこるトラブルは、その後の家族関係にも大きな影響をあたえ、なかなか関係の改善が進みません。
必ず周りの人とじっくり相談してから、決めるようにしましょう。