墓じまいの手続きと納骨のかたち
先祖代々のお墓を管理することができなくなって、お墓を整理する「墓じまい」が増えています。
墓じまいをする場合、どのように手続きを踏めばいのでしょうか。
また、お墓から取り出したお骨を納骨する場合、どのようなカタチがあるのでしょうか。
トラブルにならないために、どのような準備が必要かを紹介します。
墓じまいが増えている理由とは
墓じまいとは、先祖代々受け継がれてきたお墓を、管理ができなくなったために整理して取り払ってしまうことをいいます。
近年、墓じまいをする人は増加の一方をたどっています。
そもそも墓じまいが増えている理由とは何でしょうか。
主な理由として2つの理由が挙げられます。
- 後継者がいない
- お墓が遠くにある
生涯未婚の、いわゆる「おひとり様」や、子どものいない人、子どもがいても実家から離れてしまっているなどという家が増えてきています。
先祖代々のお墓を継承するための後継者がいないという現実が多くあります。
このままでは、のちの世代にお墓を管理してくれる人がいないので、将来的には無縁墓になってしまいます。
また、子どもがいてもお墓のある土地に住んでいないので、定期的にお墓をお参りし管理していくことが難しくなってきています。
管理できなくなったお墓は、一定期間をすぎると無縁墓になってしまう場合があります。
そうなる前に、墓じまいをしてしまおうというケーズが増えてきているというわけです。
墓じまいの手続き
墓じまいをする場合、次の手順で行います。
- 改葬先のお墓の管理者から受入証明書をもらう
- いまのお墓がある自治体から改葬申請書をもらう
- いまのお墓の管理者に改葬申請書へ署名してもらう
- いまのお墓がある自治体に書類を提出して改葬許可証を交付してもらう
- いまのお墓から遺骨を取り出して墓地を更地にして、管理者に墓地を返す
- 改葬先のお墓の管理者に改葬許可証と墓地使用承諾書を提出して納骨する
墓じまいの費用は
墓じまいにかかる費用は、1平方メートル単位での見積もりになります。
山の上や撤去のための重機が入らないような場所にお墓がある場合は少し高くなりますが、5~7万円が目安とされています。
また、墓じまいによって檀家をやめる場合は、撤去費用の他に離檀料が必要な場合があります。
この離檀料がトラブルの原因になることがあります。
墓じまいをするときは、まえもって必ず菩提寺に話をするようにしましょう。
さまざまな納骨のかたち
継承する必要のないお墓を選ぶ人が増えています。
子どもがいない家庭はもとより、そうでなくても継承の必要がない納骨の方法を選ぶ人が、都市部を中心に増えています。
どんな納骨の方法があるのでしょうか。
納骨堂
宗派の本山に納骨することは昔からありましたが、お骨を個別に納めるロッカー式の納骨堂や、仏壇式の納骨堂、位牌式の納骨堂などを、寺院以外の公営墓地や民営墓地で求める人がここ数年で増えてきています。
最近では、立体駐車場のようなシステムを利用したビル型の自動搬送式の納骨堂が都心を中心に広がっています。
駅の近くで立地もよく、天候に左右されずに遅くまでお墓参りできるところに人気が集まっています。
昔から合祀型タイプの納骨堂も、ここ数年では血縁関係を超えた共同墓として注目されています。
樹木葬
樹木葬は、自然の景観をそのまま活用した里山型樹木葬や、合祀タイプのシンボルツリー型樹木葬、都市部では多く見られる庭苑型樹木葬があります。
樹木葬は管理している墓地によってスタイルがかなり違うので、契約するときは必ず見学することをお勧めしています。
散骨
散骨というと海洋散骨がありますが、ほかにも山野に散骨する自然散骨、宇宙や大気圏にお骨を打ち上げる宇宙葬などがあります。
手元供養
火葬が終わって収骨するとき、喉仏を別に取り分ける「分骨」をするのは、もとは手元供養をするためです。
ほんのわずかでも、大切な個人のお骨を手元に置いて供養したいと思うのが、人間の心理ではないでしょうか。
最近ではお骨がそのまま納まるタイプの仏壇も登場しました。
一時的な方法として供養するのはいいのですが、家族が亡くなったときは、手元にあるお骨もお墓に入れるのを忘れないようにしてください。
墓じまいのトラブル
墓じまいのトラブルには注意しなければいけません。
お寺や親族とのトラブルは、できるだけ避けたいものです。
墓じまいをする側の人は、「墓じまい=離檀」だと考えていることが多いです。
しかし、お寺の人から見れば墓じまいと離檀はまったく別のことです。
こうした認識の違いがトラブルに発展する場合があります。
必ずお寺と相談し、前もって話をしっかりしておくようにしましょう。
また、親戚が近くにいる場合も要注意です。
相談することなく墓じまいをすると、親戚との関係性が悪くなってしまうことがあります。
墓じまいをすることで、親戚がお参りしたくてもできなくなってしまうという現実があります。
逆の立場を考えてみてください。親戚のお墓が突然なくなってしまったらどうでしょう。
「なぜ」「どうして」という気持ちになるのではないでしょうか。
墓じまいをすると、家族はよくても親戚が納得いかないというケースはすくなくありません。
永代供養をしてでも、先祖の供養を続けたいという気持ちを伝えるなど、しっかりと話し合いをして、トラブルが生じないように注意しましょう。
お墓は残された人が手を合わす場所
お墓は、残された遺族が個人を思い、手を合わす場所です。
亡くなる人からみると「自分が入る場所」ですが、遺族の側から見れば「個人を祀る場所」です。
自分一人の都合ばかり見て、勝手に墓じまいを勧めてしまうと、トラブルに発展することがあります。
お参りする人がお参りしやすく、守りやすいお墓を考え、しっかりと周りと話し合いをするようにしましょう。