介護の問題は、高齢になれば避けては通れません。
しかし、元気なうちから準備をしている人はほとんどいないでしょう。
多くの家庭で、介護は突然始まります。ちゃんと準備していればゆとりをもって対応できますが、突然のことで必要以上に家族に負担がかかってしまうのが現実です。
さらに、介護費用は総額で数百万円ともいわれています。
実際、どのような費用がかかり、あるいはどのような問題が起こるのでしょうか。
また、訪問介護にも様々な種類があります。「訪問介護サービス一覧」老後を自宅で過したい人が受けられるサービスを紹介していますので、合わせてご覧ください。
親の介護にかかる費用と現実
介護期間の平均は約4年
厚生労働省の資料によると、令和3年の平均寿命は 、男性が81.47年、女性が87.57年とされています。
対して健康寿命となると、男性が72.6歳、女性が75.5歳、総合で74.1歳というデータが発表されています。
健康寿命とは、健康に日常生活を送れる期間を指す言葉です。
つまり、健康寿命が終わった「日常生活に制限のある健康ではない期間」が、男性で約8年、女性で約12年あるということの裏返しでもあります。
この期間が、介護が必要であると考えられる期間なのです。
一方で、公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、介護期間の平均は54.5か月で、約4年7か月であるとされています。
介護費用は数百万円にも
介護にかかった費用のうち、住宅の改造や介護用ベッドの購入などで一時的にかかった費用の合計金額は、平均69万円、月々にかかる費用は1か月あたり約8万円です。
平均の期間と費用で考えてみると、総額はじつに500万円近い金額が親の介護にかかることになります。
しかし、そのための費用をまえもって準備している人はほとんどいません。
親の介護にかかる費用を、だれが負担するのでしょうか。
じつはこれが大きな問題であり、トラブルを生み出す原因にもなっています。
いまの日本の社会では、家族のあいだでもお金の話をすることはなんとなく憚られる思いがします。
そのため、あらかじめ介護費用についての話をすることも少なく、急に介護が始まったときはとりあえず息子や近くに住む子どもが負担をすることがほとんどです。
この場合、介護費用についての話をしたことがなく、立て替えるというかたちで負担をし、あとから返してもらうことを考えているという人が多くあります。
親の介護に誰のお金を使うのがいいのか
親の介護で自分のお金を使うことは悪いことではありません。
むしろ親を思う気持ちから起こる大切な行動だと思います。
しかし、あとで返してもらうと思っているときは注意が必要です。
親や兄弟とお金の話をしていない場合、介護にかかったお金は自分が思っているほど戻ってこないのが現実です。
親のお金でお金を使ってしまうと、いざ自分や配偶者に介護が必要になったときに、お金が底をついている可能性もあります。
親の介護にかかる費用は、親のお金を使うようにしておいたほうが、その後のことも考えると無難な選択肢だといえるでしょう。
親の介護で起きる問題
親の介護の現場でも、さまざまな問題が考えられます。
精神的なストレスや肉体的な疲労の蓄積など、急に始まる介護の負担は大きいでしょう。
あらかじめどのような問題が発生しているかを知ることで、対処することができるでしょう。
介護虐待
介護虐待は最も多い問題です。
在宅介護、施設介護を問わず報告されていますが、その虐待の内容は大きく5つにわけることができます。
- 殴る蹴るなどの暴力行為や拘束、薬の過剰投与による身心の自由を奪う身体的虐待
- 暴言や威圧、脅迫、無視などの心理的虐待
- 年金や預貯金の使い込み、日常生活に必要なお金を渡さないなどの経済的虐待
- わいせつ行為など性的な嫌がらせをする性的虐待
- 入浴や排せつなどの必要な介護をしない介護放棄
厚生労働省によると、虐待と判断されたものは、在宅で高齢者の世話をしている家族、親族、同居人等によるものが1万6千件以上、介護施設などで養介護事業の従事者によるものが400件以上で、ともに増加傾向にあります。
介護うつ
在宅介護によくみられます。
介護生活のストレスから、介護をしているという家族がうつ病になることをいいます。
在宅介護者の4人に1人が発症しているという報告もあります。
介護離職
家族の介護と仕事の両方が難しくなり、会社を退職する人がすくなくありません。
政府は「介護離職ゼロ」を目指していますが、あまり効果は出ていないようです。
介護離職した中高年は介護が終わったあとの再就職が難しく、収入も大幅に下がるというデータも出ています。
介護離婚
介護が原因で離婚する家庭が増えています。
配偶者の親や兄弟姉妹との関係が悪く、配偶者の理解と協力を得られない状態で、義理の親の介護によるストレスから離婚に至るケースです。
ダブルケア
晩婚による高齢出産で親の介護と子育てが同時期に発生する状態のことをいいます。
ダブルケアは核家族化による親戚づきあいの希薄化や、少子化によって介護負担の集中が招いた結果でもあります。
今後ますます深刻化が予想されていて、親の介護をだれがするのか子どもたちの間で問題になりつつあります。
老々介護
高齢者が高齢者を介護する状態のことをいいます。
子どもがいてもダブルケアの負担が大きいので、高齢者の親も可能なかぎり自立して生活しています。
少し前までは高齢者夫婦における介護に使われていましたが、最近では未婚の兄弟姉妹におけるお互いの介護をはじめ、長寿化により高齢の親を高齢者になった子どもが介護する親子の老々介護も出てきました。
認認介護
老々介護が進んだ結果、認知症を発症した高齢者が認知症の家族を介護している状態のことをいいます。
認知症患者数は400万人以上で、軽度認知障害の人もあわせると、65歳以上の高齢者の4人に1人は認知機能になんらかの問題を抱えています。
病院で認知症の診断を受けていない人まで含めると、今後は認認介護の状態にある世帯が増えていくといわれています。
介護難民
介護が必要な高齢者が増えた結果、施設でも在宅でも必要な介護サービスが受けられないケースが出ています。
原因として介護人材の不足や社会保障費の問題がありますが、介護難民は認認介護や老々介護の温床にもなっています。
介護離職の問題
親の介護のために、仕事を辞めなければいけないという、「介護離職」が大きな問題となっています。
介護離職をしている人の多くが40代から50代の働き盛りの世代です。
仕事を辞めて親の介護をすることは、とてもすばらしいことです。
しかし、計画的に行わなければ介護をする人もされる人も、ともに倒れてしまう危険があります。
介護離職の問題とメリット・デメリットについて紹介しているので、ぜひ確認しておくようにしましょう。
地域包括センターの利用
このような介護の問題を解決するために厚生労働省は「地域包括ケアシステム」という仕組みづくりを推進しています。
地域包括センターとは、介護、医療、保健、福祉などの側面から高齢者を支える「総合相談窓口」です。
専門知識を持った職員が、高齢者が住み慣れた地域で生活できるように介護サービスや介護予防サービス、保健福祉サービス、日常生活支援などの相談に応じています。
また、介護保険の申請窓口も担っています。
市区町村には、高齢者の生活や介護の相談窓口として地域包括支援センターが設置されています。
突然の介護で慌てないように問題が起きる前に近くの地域包括支援センターを利用して、地域の介護サービスの情報を得るなど準備をしておきましょう。
介護ヘルパーができること・できないこと
訪問介護を利用する場合、介護ヘルパーができることとできないことがあります。
これを知らないためにトラブルが発生してしまうケースも少なくありません。
問題なく介護をすすめていくためには、介護ヘルパーができること・できないことをチェックしておきましょう。
介護保険外サービスの利用
家族の人が介護を受けなければいけなくなると、これまで紹介したようなさまざまな問題が生じます。
介護保険で適用されるサービスによって、家族の人の負担は減らされるとはいえ、その範囲は限定されているので、家族が直接介護に携わらなければいけないことも数多くあります。
できるだけ家族の介護負担は減らしたいと考えている人も多いでしょう。
介護保険外サービスを利用すれば、公的保険で利用できるサービスのほかにも、多くの介護の補助を頼むことができます。
ただし、民間企業によるサービスとなるので、費用面でいえば割高になるのがデメリットといえます。
とはいえ、家族の介護負担を減らすことができることは、大きなメリットといえるでしょう。
介護保険外サービスでできること「介護負担」を軽減するための最善の方法を紹介しているので、コチラもご覧ください。