今回は、認知症予防ガイドラインの中で推奨されている、身体活動、認知トレーニング、健康・栄養、社会活動を中心に、認知症を予防するための効果的な6つの習慣を紹介します。
認知症とは?
そもそも、認知症とはどういうものでしょうか?
認知症とは、さまざまな原因で記憶や思考などの認知機能が低下して、日常生活や社会生活に支障がでることをいいます。
認知症には種類があり、症状の進み具合や原因も異なりますが、別の病気が原因で発症することもあります。
認知症の中で一番多いのが、アルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー認知症では、脳に異常なたんぱく質がたまって、脳の神経細胞の数が少なくなっていきます。
そのほかにも、脳の血管の障害による血管性認知症や、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがあります。
また、認知症には明確な治療法がなく、早期発見をすることで症状を抑えることができます。
しかし、本人が「自分は認知症じゃない」と言って認めないケースが多く、発見が遅れることが多い病気でもあります。
そうなると、認知症が発覚したときには重度の症状があらわれているというケースも少なくありません。
家族や周りの人が、できるだけ早くから気に掛けてあげるようにしましょう。
認知症の初期症状「10のチェックリスト」を紹介しているので、ぜひチェックしておきましょう。
認知症を予防するための効果的な6つの習慣
WHO(世界保健機関)で提唱している、認知症予防のガイドラインがあります。
正式名称は「認知機能低下および認知症のリスク低減WHOガイドライン」といいます。
そこでは、以下の12の項目に分けられています。
- 身体活動
- 禁煙
- 栄養
- アルコール
- 認知的介入
- 社会活動
- 体重管理
- 高血圧の管理
- 糖尿病の管理
- 脂質異常症の管理
- うつ病への対応
- 難聴の管理
こうしたガイドラインをもとに、認知症を予防するための6つの習慣を紹介します。
健康管理
認知症が引き起こされる原因として、糖尿病や脳血管の障害などの生活習慣病が関係しているといわれています。
生活習慣病の予防や治療は、間接的には認知症の予防となります。診察や治療をきちんと受けておくようにしましょう。
睡眠や栄養バランスのいい食生活を心がけることは、認知症だけではなく生活習慣病の予防に効果的です。
認知症の原因のひとつに、脳内のアミロイドβたんぱくの蓄積があるといわれています。
これを抑えるものとして、魚の油に多く含まれているEPA(エイコサペンタエン酸)や、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの多価不飽和脂肪酸、カテキン、ポリフェノールなどの抗酸化物質が効果的といわれています。
ただし、かたよってとり続けないように気を付けましょう。
主食が麺類やパンのみの場合、低たんぱく・低栄養の状態になってしまいます。
バランスよく栄養を取ることを心がけましょう。
肉よりも魚を多くとったり、果物や野菜、豆類を多くとったり、未精製の穀物をとったりするのがいいでしょう。
また、乳製品、食塩、加工品、ファストフードなどは控えめにしましょう。
過度の飲酒や喫煙には注意し、自分の健康は自分でしっかりと管理していきましょう。
運動をする
適度に運動することは、脳や全身の細胞に酸素がいきわたって血流がよくなり、脳が活性化されて認知症のリスクを減らすといわれています。
WHOが推奨する運動方法は、有酸素運動とされています。
ウォーキング、水泳、踏み台の昇降運動、ヨガなど、手軽に始められるものが多くあります。
軽く息がはずむ程度、会話できる程度の、少し心拍数が上がる運動を10分以上継続するのが、有酸素運動のポイントです。
簡単にできる運動として、まずは週3回以上、一日30分以上歩くことから始めてみましょう。
また、歩きながら計算したり、しりとりをしたりなど課題を取り入れることで、認知症予防の効果が高まります。
腰や関節の痛みが気になる人は、足腰の負担が少ない水中ウォーキングがおすすめです。
運動をすることは、脳や全身の血行を改善するとともに、達成感を感じて精神面でも安定することができます。
さらに、筋力の低下による転倒予防にもなります。
ほかにも、体の一部を使うものとして、楽器の演奏や編み物、料理なども、手を動かすことによって脳の活性化を促す効果があります。
無理のない範囲で楽しみながら運動する習慣をつけましょう。
たくさん笑う
笑うと脳の血流がよくなり、免疫力が上がるといわれています。
がんやウイルスに対する抵抗力が高まって、同時に免疫異常の改善につながり、免疫システム全体のバランスを整える効果もあります。
笑いの力で、新しいことを学ぶときに働くといわれる脳の海馬という部分が活性化されて記憶力がアップします。
物を知覚したり、運動を制御したり、知的活動に関与している大脳新皮質に流れる血液量が増加して、脳の働きが活発になります。
笑うことの効果はいたるところに現れます。
深呼吸や腹式呼吸と同じような状態になって、体内に酸素がたくさん取り込まれて血行が良くなって、新陳代謝が活発になります。
自律神経が整い、また脳内ホルモンが分泌されて幸福感をもたらします。
実は、その効果は「作り笑い」でも、ほぼ同じ効果が得られるといわれています。
笑えないと思う日や、つらいことがあったときでも、ニコッと口角をあげてみるだけでいいでしょう。
いつでもどこでもできる、手軽な認知症予防です。
コミュニケーション
コミュニケーションをとって、人と人とのつながりを持つことは、認知症予防においてとても大切なことです。
人と会うためには、日にち、時間、場所を設定して約束を決め、また身だしなみを整えるなど、たくさんのことを考えなければいけません。
相手の気持ちを考えたり、人と接することで新しい刺激を受けたりすることは、脳をしっかり使っているのです。
会話をすることは、脳と口を動かすトレーニングになっているのです。
年齢を重ねると、人と会うことや新しいつながりが面倒に感じるかもしれません。
家の中に引きこもってばかりいると、認知機能が衰えやすくなってしまいます。
外出やデイサービスを利用するなどして、人と関わるところへ出かけて、積極的にコミュニケーションをとるようにしましょう。
老後の生活で大事だといわれている言葉があります。
「キョウイク」と「キョウヨウ」です。
「キョウイク」とは、「今日、行くところがある」
「キョウヨウ」とは、「今日、用がある」
充実感と安らぎのある生活を送るためには、コミュニケーションは欠かせないものです。
思い出す
会話や写真、映像などから昔の懐かしいものにふれ、過去を思い出すことは、精神の安定やコミュニケーションを深める効果があるといわれています。
ものごとを思い出す「回想法」は、認知症やうつ病、記憶障害の症状改善に役立てられています。
昔のことを思い出して、語り合うことで、脳の海馬という部分に蓄積された記憶が引き出されて、脳のいろいろな部分を刺激します。
これによりのうが活性されて、認知機能の向上や改善に役立ちます。
また、精神の安定や認知機能の改善が期待されます。
最近のできごとの記憶を保つことが困難になってきた人も、昔の記憶は覚えているということがあります。
昔のことを思い出し、言葉にすることで、脳が活性化して、活動性や自発性、集中力の向上が期待できます。
子どもや孫たちと、思い出の写真や物を見たりしながら、昔の経験や思い出を語り合うことも、素晴らしい時間となることでしょう。
知的活動をする
知的活動とは、頭を使う活動のことです。
脳トレやゲーム、指を使って細やかな動きをする知的活動は、脳にとってよい刺激になります。
これによって記憶力や判断力、思考力などの認知機能を高めるといわれています。
知的活動には、囲碁や将棋、パズル、折り紙、手芸など、さまざまなものがありますが、なかでも「大人の塗り絵」はおすすめです。
指先を動かすことで脳全体の血流を活発化して、脳を活性化するのに効果的です。
塗り絵は、一見すると塗るだけの単純作業に見えますが、構図を覚えたり、色を塗る順番をきめたりするなど、脳をしっかり使います。
視空間認知機能の改善効果が期待できて、感情面の安定につながって、認知症予防の効果があるといわれています。
大人の塗り絵と子どもの塗り絵の違いは細やかさです。
大人の塗り絵は自宅で簡単に始められる認知症予防のひとつです。
「脳の健康を保つ方法」認知症予防のためにやっておきたい生活習慣
「見守りシステム」で認知症の早期発見を
認知症は、早期発見することで症状の進行を遅らせることができます。
しかし、たとえ一緒に暮らしていたとしても家族がそれに気がつくことは難しいものです。
さらに近年では、高齢者でも一人暮らしをしている人も多くなり、気がついたときには認知症の症状が進行しているということも考えられます。
そこで、高齢者見守りサービスを利用することで早期発見につなげることができます。
24時間365日にわたって見守ってくれるサービスを利用することで、高齢者のちょっとした変化にも気がつくことができます。
認知症だけでなく、体調の不調にも気がつくことができるので、遠くに離れて住んでいる家族がいる人などにとっては、とても安心できるサービスです。
認知症予防は楽しみながら!
認知症を予防するための効果的な6つの習慣を紹介しました。
しかし、あれもこれもと、やらなければいけないことを考えると、かえって憂鬱な気持ちになってしまうものです。
無理をしても、続かなければ意味がありません。
できる所から、そして楽しみながらすることが大切です。
認知症の予防のために、できることから始めていきましょう。