近年「おひとりさま」といわれる、いわゆる一人暮らしの高齢者が増えてきました。
一人暮らしをするとなると、自分で食事を用意や洗濯などの家事から、買い物まで、何から何まで自分でしなければいけません。
そんな中で特に大変なのが、食事です。
自分で用意すると同時に、健康にも気をつけなければいけません。
『87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし』の著者である多良美智子さんは、古い団地でひとり暮らしをしている中にも、大きな生き甲斐をもって生活をしています。
ここでは本書から、多良さんの食生活に焦点をあてて、高齢者の食事の楽しみ方を紹介します。
87歳、古い団地でひとり暮らしを愉しむ
著者である多良美智子さんは87歳、築55年の古い団地でひとり暮らしをしています。
以前は家族5人で暮らしていましたが、娘1人と息子2人はそれぞれ独立し、7年前に夫を亡くしました。
そんな多良さんが2020年に、当時中学生だった孫と一緒に「Earsおばあちゃんねる」というyoutubeをはじめました。なんと85歳でyoutuberになったのです。
生きてるうちは楽しくやろう
夫が亡くなったとき、「自分もいつ死ぬかわからない。生きているうちはもっと楽しくやろう」と思い、ひとりの自由を満喫しようと考えることにしました。
24時間自由に使えるし、家の中を好きなように変えることもできます。80歳でピアスをあけたり、イギリス旅行のツアーにひとりで参加したりもしました。
反対に、できないことも増えてきました。
しかし、それは年をとればしかたのないことです。受け入れて、できることを一生懸命にやっていくのです。
87歳の食生活は、調理を簡単に食事を愉しむこと
多良さんは、65歳のときに調理師専門学校に通って調理師免許を取得しました。
当時、姉がガンで亡くなり、精神的にかなり落ち込んでいました。
あまりにがっくりきている様子を見かねて子どもたちが「何か好きなことをやったらいいよ」と背中を押してくれたことがきっかけで、調理師専門学校に通うことにしたのです。
スケジュールはハードで、やる気はあっても年のせいか香義の内容はなかなか覚えられません。
しかし、もともと料理好きということもあって、1年で奉事に調理師免許を取得し、卒業することができました。
1日3食、ごく粗食な食事
多良さんはひとり暮らしですが、1日3食の食事は自分で用意して、きちんととるようにしています。
朝は7時、昼は12時、夜は6時半と時間を決めて、1日の区切りの時間にしています。
習慣になっているので、食べないと次のことにすすめなくなっているのです。
ただ、年齢とともに少食になってきたので、食事の内容はごく粗食です。
朝は、8種類の材料を入れたスムージーとりんご半分、ゆで卵1個。毎日同じ食事ですが、飽きることはなく、むしろ何を作ろうか悩まなくてすんでいます。
昼は、肉野菜炒め、具だくさんの味噌汁などです。肉や魚などの動物性たんぱく質を必ずとるようにしています。
一日の中で、昼食を一番しっかりととっているのです。
夜は、晩酌をするのでおつまみになるようなものを少しだけです。夏は冷や奴、冬は湯豆腐と、豆腐はよく食べるようにしています。
寝る前に食べ過ぎないように、夕食は1日のなかで一番軽めにとっています。
器で食事を楽しむ
1人の食卓で粗食ですが、食事の時間をとても大切にしています。
1品ずつ、お気に入りの器に盛り付けることで、楽しみながら食事をとるのです。
若いときから器が大好きでした。自分で使うのはもちろん、見るだけでも楽しいのです。
1人ごはんでよく使う器は、すぐに取り出せるようにキッチンのシンク上の棚にしまっています。
あまり量は食べないので、少量を盛り付けても見栄えがいい小さめの器が多いです。
切っただけのちくわでも、お気に入りのお皿に盛り付けると、立派な一品になります。見た目でもお腹と心を満足させてくれるのです。
晩酌は蕎麦猪口1杯だけ
お酒が大好きな多良さんは、今でも晩酌はかかせません。
しかし、飲み過ぎないように、蕎麦猪口1杯と決めています。
晩酌は一日の締めくくりのような時間です。
「今日も一日すごせたな」とほっとした気持ちになります。
手間をかける楽しみも
料理は簡単が基本ですが、手間をかけることを楽しんでいるところもあります。
かつてはぬか漬けをしていました。春にはじめて冬になる前に終わるスタイルです。そして冬には白菜漬けをつけます。
毎年続けているのは、梅干し作りです。
団地のマーケットから梅を1キロ買ってきて、塩と赤じそで漬けます。1キロでちょうど1年で食べきることができるくらいの量です。
ベランダでは、トマト、なす、きゅうり、小松菜、春菊など、季節の野菜を作っています。
収穫した野菜は、サラダにしたりお味噌汁に入れたりしています。
食事メニューの紹介
多良さんは、料理は簡単に「まぜるだけ」「漬けるだけ」というふうに手軽に作ることが、毎日料理を続けていくコツだといいます。
そんな多良さんの作る料理のメニューを紹介しています。
87歳古い団地で愉しむひとり暮らしの女性の簡単にできる食事メニューで紹介しているので、あわせてご覧ください。
食事を楽しむこと
著者の多良美智子さんは、このようにして食事を楽しみながら1人の生活を送っています。
誰でも経験があるでしょうが、だれかと一緒に食事を食べることと比べると、1人でぽつんと食事をするとさみしくて味気ないものになってしまいがちです。
実際、1人のとる食事はおいしくないからと、食べること自体をやめてしまう高齢者も少なくありません。
そうした中で、1人でもしっかりと食事をとるためには、食事そのものを楽しむことが大切なのです。