高齢者の転倒や骨折の多くは、自宅の中で発生しています。
転倒事故によるケガで、そのまま寝たきりになったり、重い場合は命にかかわるケースも少なくありません。
転倒事故や骨折を防ぐために、転倒リスクについてチェックしておきましょう。
転倒リスク
高齢者の転倒事故が後をたちません。
転倒事故の多くは、自宅で発生しています。主な発生場所は、浴室や脱衣所、寝室、玄関、階段、トイレなどがあげられます。
事故によるケガで長期的な入院となると、高齢者にとっては回復にも時間がかかってしまいます。
そのまま寝たきりの状態になったり、認知症が発症してしまったり、重い場合は命にかかわるケースも少なくありません。
家庭内の転倒事故は、ちょっとしたが工夫で防ぐことができます。
また、転倒のリスクを減らすためには、その要因となるものがあることも理解しておく必要があります。
転倒事故の要因
転倒事故には大きくふたつの要因があると考えられます。
外的要因と、内的要因です。
簡単に言い換えれば、外的要因は生活環境のこと、内的要因は自分自信の精神状態や身体機能のことです。
もう少しくわしく見てみると、外的要因とは段差であったり、履物、床に置かれたモノ、部屋の暗さなどがあげられます。
段差につまずいて転んだり、反対に段差を降りようとして足を滑らせて落ちてケガをするというケースはよくあります。
また、何気なく床に置かれているモノでも、高齢になると気がつかなかったり、よけたつもりでもよけきれずに足が引っかかって転んでしまうことがよくあります。
部屋や廊下が暗いと、モノが置かれていることに気がつかないということもありえます。
転倒の要因はそうした生活環境だけでなく、自分自身の精神状態や身体機能の衰えなどによる内的要因も影響しています。
高齢になると精神的に不安定になり、自分では普通に感じていても、急に緊張したり興奮したり、また焦りや不安などがあらわれやすくなります。
不安定な精神状態では、自分でも思いがけない行動をとってしまうことがあります。
身体機能も低下し、たとえば足が思ったように上がらなかったり、目が見えにくくなったり、耳が聞こえにくくなったりします。
段差のない平坦な場所であっても、つまずいたり足をすべらせたりして転んでケガをすることもよくあります。
また薬の副作用も影響し、体が思うように動かなかったり精神的に不安定な状態に陥ることもあります。
言い換えれば、いつまでも若いと思うことなく、自分の体や精神状態をよく把握しておくことが大切だということです。
このように、外的要因と内的要因が何かの拍子で合わさったときに、転倒事故が発生します。
転倒のリスクを減らすためには、こうした要因があることをしっかり理解しておきましょう。
転倒リスクチェック
転倒リスクのチェックをしていきましょう。
これから紹介する質問事項に当てはまる人は、転倒のリスクがある場合があります。
歩行能力の低下
- この1年の間に転倒した
- 横断歩道を渡りきることができない
- 1km程度の距離を続けて歩くことができない
このような人は、歩行能力の低下が考えられます。
普段から歩くことを心がけましょう。
歩くことは、効率のよい全身運動です。また、呼吸器官や循環機能も活性化されるので、疲れにくい体になります。
日常的に歩いたり、筋力や柔軟性を高めておくことが大切です。
バランス能力の低下
- 片足で立ったまま靴下をはくことができない
という人は、バランス能力が低下しています。
片足立ちはバランスだけでなく、同時に筋力も必要になります。
はじめは壁などを支えにしながらでいいので、片足で立つ練習をしましょう。
筋力の低下
- 水で濡れたタオルやぞうきんをきつく絞ることができない
このような人は筋力の低下が考えられます。
握力は全身の筋力と深い関係にあります。
つまり、濡れたタオルやぞうきんをきつく絞ることができない人は、全身の筋力が低下している可能性があるということです。
腕や手の筋力だけでなく、足腰の筋力を落とさないように、散歩や体操を行うようにしましょう。
疾病による転倒リスク
- この1年の間に入院したことがある
- 立ちくらみをする
- 脳卒中を起したことがある
- 糖尿病といわれたことがある
現在持っている、あるいは過去にかかった病気が原因で、転倒する恐れがあることも忘れてはいけません。
入院などで筋力が低下してしまった人や、慢性的な病気がある人は転倒のリスクが高まっています。
歩くときには、体にあった杖や歩行器などを利用して、転ばない環境作りをしていくことが大切です。
また、立ちくらみは転倒する危険が大きくあります。寝起きや立ち上がった瞬間など、姿勢が大きく変わったときに、立ちくらみが起きやすくなります。
糖尿病などは、運動することと食事の栄養の面と、その両面からの取り組みが必要な場合もあります。
体調に合わせて、継続的に運動するように心がけましょう。
服薬による転倒リスク
- 睡眠薬、降圧剤、精神安定剤を服用している
薬は健康な体を維持していくためには必要なものである反面、その副作用として眠気やふらつきをまねくことがあります。
注意事項についてよく説明をうけておかなければいけません。
万が一、薬の副作用でこれらの症状がつよくあらわれる場合には、必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
転倒の外的要因
- サンダルやスリッパをよく使う
- 家の中でよくつまずいたり、すべったりする
生活環境を整え、転びにくい環境作りをしていきましょう。
スリッパやサンダルは使いやすい反面、転倒の要因にもなります。外出をするときには、脱げやすかったり滑りやすかったりする履物は避けて、歩きやすい靴を選ぶようにしましょう。
居住空間でも、たとえば敷物のほつれやめくれ、段差なども転倒の原因になります。
身の回りの整理整頓を心がけて、転びにくい環境作りをしていくことが大切です。
視力、聴力の低下
- 新聞や人の顔が見えにくい時がある
- 会話がよく聞こえないときがある
視力の低下、聴力の低下にも気をつけましょう。
人間は五感のすべてを通して情報を取り入れています。
しかし、そのうちのひとつでも遮断されるだけで、普段できている行動ができなくなってしまいます。
視力や聴力が衰えることも同じで、取り入れる情報量が少なくなってしまうので、転倒につながりやすくなります。
見えにくい、聞こえにくいという場合は、できるだけ早く医師の診断を受けるようにしましょう。
視力にあっためがね、聴力にあった補聴器を使うだけで転倒のリスクは下がります。
転倒に対する不安
- 転倒に対する不安が大きい
- 転倒が怖くて外出を控えることがある
一度転んでケガをしてしまうと、また転んでしまうのではないかという恐怖心から、閉じこもりやすくなってしまうことがあります。
しかし、出歩かなくなると、さらに足腰の筋力が落ちて、ますます転びやすくなります。
移動するときにはそばで見守ってもらったり、手すりを付けるなどして、転びやすい環境を改善してもらいましょう。
家族や周りの人にサポートしてもらうなどして、その不安を払拭することが大切です。
最後に
転倒事故の多くは、家の中で発生しています。
それなのに、対策をしていない人が多くあります。
これらの事故は、身の回りのちょっとした工夫と、自分自身の体の状態を理解しておけば防ぐことができます。
また、高齢者の転倒事故予防のポイントも紹介しています。転倒リスクをチェックして、転倒や骨折をしたいためのポイントを抑えておきましょう。