いつか必ずやってくる「もしも」の時に備える「終活」のなかでも、特に難しく感じるのが「お葬式」です。
自分の「もしも」に限らず、親や家族などの「もしも」に出会い、自分が喪主になってお葬式を執り行わなければいけない場合も少なくありません。
そんな中で気になるのが、「お葬式の費用」です。
葬儀会社によって費用はさまざまで、さらにプランも多く複雑化しているのが現状で、そのために実際どれくらいの費用がかかるかわからないというのが実態です。
ここでは、葬儀経験者に対して調査したアンケートをもとに、お葬式でどれくらいの費用がかかっているのか、その現状を紹介します。
お葬式の費用のリアル
お葬式は近年、核家族化や高齢化などの社会の変化に伴って小規模化が進み、家族葬や直葬などが浸透してきています。
しかし、その費用は実際のところまだまだ不明瞭で、さらに葬儀会社の葬儀プランの複雑化によって、どれくらいの費用がかかるのかわかりにくくなっています。
そこで、「小さなお葬式」を運営している株式会社ユニクエストは、過去1年以内に喪主を経験した人を対象にアンケート調査を行いました。
そこから、葬儀に関する費用の実態が見えてきました。
【調査概要】
- 調査対象期間 2022年2月24日(木)~2022年5月23日(月)
- 調査方法 Web上でアンケートを実施
- 回答数 事前調査342,897人 本調査11,162人
- エリア 日本全国(各都道府県別)
- 事前調査条件 日本に住む、40代以上の方
- 本調査条件 事前調査対象者のうち、1年以内に喪主を経験した方
- 年代 40代22.49%/50代36.04%/60代以上41.47%
「家族葬」がもっとも行われた
過去1年以内に執り行われた葬儀は家族葬です。家族葬を選択した人は65.5%、続いて一般葬が19.5%、そして直葬が13.3%という結果になりました。
近年コロナ禍の影響で小規模化しつつあるお葬式ですが、やはり直接火葬場へ行く直葬ではなく、通夜や告別式を行って故人を見送る家族葬を選択する人が多いということがわかります。
たとえ小規模とはいえ、親しい家族や親戚と一緒に、ゆっくり故人と別れを惜しむ時間がほしいと考えている人が多いということがいえるでしょう。また、参列者への対応が少ないということも、家族葬が選ばれる理由でしょう。
一般葬は、より多くの人に生前の故人との関わりへのお礼を直接伝えることができます。同時に、故人との思い出などを多くの人と共有し、あるいは家族でさえ知らなかった故人の様子を知ることもできるのがメリットです。しかし同時に、参列者への対応や香奠などの都合から、少なくなってきているというのが現状です。
直葬は通夜や告別式を行わず、直接ご遺体を火葬場へと運びます。葬儀の準備や費用を抑えることができる反面、故人とお別れをする時間があまりとれなかったり、親族との意見が合わないことが多く、トラブルを生みやすいことから、まだまだ選ぶ人が少ないのではないでしょうか。
家族葬にかかる費用
調査によると、家族葬の費用は平均でおよそ110万円でした。
内訳として、葬儀そのものにかかった費用が約75万円、飲食にかかった費用が約12万円、お布施や宗教者の手配にかかった費用が約23万円でした。
葬儀そのものの費用は、全体の約70%の人が100万円未満で行っています。
一般葬にくらべて費用が安く抑えられるのが家族葬のメリットですが、自由度が高いぶん、内容によって値段の幅が大きくなります。
オプションをつけることによって、当初の予算より大幅に費用がかかったということも少なくありません。
飲食にかかった費用は、全体の78.1%の人が20万円未満で準備しており、その中でも10万円以上15万円未満で用意している人が一番多い結果となりました。
家族葬は参列者が少ない分、用意する食事の数も少なく、その結果飲食にかかる費用も少なく抑えられるのでしょう。
お布施、宗教者の手配にかかる費用は、30万円未満が64.1%をしめる結果となりました。
葬儀会社と提携している僧侶や宗教者を呼ぶと、30万円未満で抑えられることが多いです。しかし、どんな僧侶が来るかわかりません。自分の信仰に沿わない宗派の人が来るかもしれないし、お経が下手だったり、愛想のない人が来る場合もあります。葬儀会社に紹介してもらった僧侶の態度が悪く、トラブルになることもあります。
反対に、普段お世話になっているお寺の僧侶に来てもらうと、自分の信仰にも沿うのは当然のこととして、よく知った人なので安心して葬儀をお願いすることができます。しかし、お布施は30万円から50万円が相場とされており、お布施に関してトラブルになることもあります。
地域別に見た場合、関東では約120万円、九州では約90万円と、地域によって幅が出ることがわかります。
直葬にかかる費用
直葬にかかった費用は、平均で約35万円でした。
内訳として、葬儀そのものにかかった費用は約23万円、飲食にかかった費用が約4万円、お布施や宗教者の手配にかかった費用が約8万円でした。
直葬の葬儀そのものの費用は、40万円未満が全体の86.8%をしめており、20万円以上25万円未満が一番多いことがわかりました。
直葬は通夜や告別式を執り行わないので、家族葬や一般葬とくらべて費用が安く抑えられることがわかります。
飲食にかかった費用は、全体の81.3%の人が10万円未満で用意しています。
直葬では飲食の時間を設けない場合が多いですが、参列するのは家族などのもっとも近しい関係だけです。そのため、飲食の費用も人数に応じて少なくなるのがわかります。
お布施、宗教者の手配費用は、15万円未満が86.6%をしめており、その中でも5万円以上10万円未満が一番多いことがわかります。
通夜や告別式での読経が必要ないため、家族葬や一般葬とくらべて少額になるのでしょう。
葬儀会社に紹介された僧侶ならば、このように比較的安く直葬を行うことができるでしょうが、普段お世話になっているお寺の僧侶に頼む場合は注意が必要です。
僧侶にとってみれば、家族葬も一般葬も直葬も、葬儀を執り行うことに変わりありません。よって、家族葬も一般葬も直葬も、同じ金額のお布施を請求される場合があります。
地域別にみた直葬の費用は、中部地方が約36万円、九州が約32万円となっています。
家族葬や一般葬とくらべると、地方別ではそれほど大きな差がないようです。
一般葬にかかる費用
一般葬にかかった費用は、平均で約190万円でした。
内訳として、葬儀そのものにかかった費用が約130万円、飲食にかかった費用が約25万円、お布施や宗教者の手配にかかった費用が35万円でした。
一般葬の葬儀そのものの費用は、100万円以上が68.1%をしめており、150万円以上200万円未満が一番多く、次いで100万円以上120万円未満が17.2%、三番目に120万円以上150万円未満が12.6%となっています。
同じ一般葬でも、100万円未満で執り行っているひとが31.9%あり、一般葬では葬儀の規模や内容によって費用が大きく変わることがわかります。
飲食にかかった費用は全体の84.0%のひとが50万円以内で用意しており、その中でも10万円以上20万円未満が一番多い結果となりました。
一般葬では家族のみならず、親戚も多く呼び、参列者に対する接待をすることがほとんどですので、必然的に飲食費用が大きくなります。
お布施、宗教者の手配費用は、50万円未満が71.2%をしめています。
家族葬や直葬と違い、一般葬を執り行う人の多くは普段からお寺と付き合いがある人がほとんどです。葬儀会社に紹介された僧侶と違い、菩提寺の僧侶に頼むと、30万円から50万円ほどのお布施が一般的です。
普段から付き合いがある僧侶なので、信頼ができ、安心して故人を送ることができます。
一般葬の地域別にみた葬儀の費用は、関東地方が約200万円、中国、四国地方が約170万円となっています。
気をつけたいお葬式のお金の問題
お葬式に関して消費者センターに相談される内容のほとんどが、お金に関することです。
大切な家族が亡くなって、準備する時間も知識もほとんどないなかで執り行わなければいけません。
さらに、悲しみにくれている状態で正常な判断ができない場合もあります。
すると、葬儀屋のすすめるとおりに受け入れてしまい、最終的な費用が多くかかってしまうというケースが多いのです。
お葬式に関する費用の話、気をつけたいお金の問題や、お葬式の費用でトラブルが起こる原因、「葬儀費用」に対する考え方を紹介しているので、こちらも確認しておきましょう。
調査結果のポイント
- 過去1年以内に最も行われた葬儀の形式は「家族葬」
- 直葬は平均約36万円
- 家族葬は平均約110万円
- 一般葬は平均約190万円
葬儀が小規模化しつつあるとはいえ、故人を送る気持ちは変わっていないようです。
葬儀費用は形式によって大きく幅があり、また地域によっても差があります。
葬儀は突然のことで、準備にも時間がありません。前もって見積もりをとり、何が必要か、不要か、考えておくのがいいでしょう。