「巫女」という言葉から、多くの人が思い浮かべるのは、神社で白い袴と赤い装束をまとい、神事に携わる姿ではないでしょうか。
しかし、巫女の歴史を紐解いてみると、現在のイメージとは異なる意外な一面が浮かび上がってきます。
かつて巫女は、神の声を伝える重要な役割を担い、政治や社会に深く関わっていました。
その影響は神話や歴史書に色濃く残され、現代でも一部の地域にその伝統が受け継がれています。
この記事では、古代から現代に至るまでの巫女の変遷や、日本におけるシャーマニズムとの関係を分かりやすく解説します。
巫女とは?
巫女の本来の役割とは?
現在、巫女というと神社で神主を補佐し、舞を奉納する女性をイメージします。
しかし、古代の巫女は神を憑依させて神の意思を伝える託宣を行う宗教者でした。
必ずしも神社に所属するものではなく、政治や社会においても大きな役割を果たしていました。
例えば、天宇受売命(あめのうずめのみこと)は『古事記』に登場し、岩戸隠れの神話で踊りを通じて神々を導きました。また、神功皇后は神託を受けて新羅遠征を成功させたと伝えられています。
このように巫女は、神事だけでなく国家的な意思決定に関わる存在でもあったのです。
『古事記』に出てくる巫女とは?
『古事記』中巻には、仲哀天皇が熊襲征討を計画していた際、后の神功皇后に神を憑依させたエピソードが描かれています。
皇后に乗り移った神は「西の方に金銀宝石があふれる国がある。それを天皇に授けよう」と告げました。
しかし天皇はその言葉を信じず、神の祟りを受けて亡くなってしまいます。
その後、神功皇后は自ら新羅遠征を行い、大勝利を収めました。
この物語は、巫女が政治や軍事にも影響を及ぼしたことを示しています。
また、この託宣の場面では、武内宿禰が審神者(さにわ)として託宣の真偽を確かめる役割を果たしました。
巫女の活動は、神と人間をつなぐ重要な役目だったことがわかります。
巫女とシャーマニズム
巫女の活動はシャーマニズムと密接に結びついています。
シャーマニズムとは、神霊や超自然的な力を介して神託を受けたり、異界について語る信仰のことです。
日本の巫女は霊媒型シャーマンが多く、神霊を自身に憑依させて神託を伝えました。
例えば、邪馬台国の女王・卑弥呼も「鬼道を事とし、能く衆を惑わす」(『魏志倭人伝』)と記され、託宣型の巫女だったと考えられています。
一方で、説話には地獄や極楽を見聞する脱魂型シャーマンも登場します。
このように、巫女は超自然的な力を借りて人々を導く存在でしたが、その力は神道儀礼や民間信仰の中で形を変え、現在も一部で受け継がれています。
巫女の歴史
時代でかわる巫女の位置づけ
大和朝廷が全土を掌握し、中央集権化が進むにつれて、巫女の役割も変化しました。
神霊と直接交信するシャーマニズム的な要素が薄れ、儀礼中心の神道が発展したことで、巫女の重要性は低下しました。
巫女は神主の補佐的な存在へと変わり、神霊を直接降ろすような活動は民間信仰に残される形となりました。
東北地方のイタコや沖縄のユタはその代表例で、現在でも少数ながら活動を続けています。
こうした民間信仰の中では、シャーマン的な巫女の要素が色濃く残っていますが、かつてのような政治的影響力はなくなりました。
巫女と遊女の関係
歴史の中で零落した巫女の一部は遊女となりました。
「あそび」という言葉は本来、神を楽しませる行為を意味します。
巫女たちは神に奉納する舞や歌を通じて神を喜ばせていましたが、やがてその対象が人間、特に男性へと変わりました。
この結果、彼女たちは「遊女」と呼ばれるようになったのです。
このような歴史的背景から、遊女という存在にはかつての巫女の名残があると考えられます。
巫女と遊女の関係は、日本の文化や信仰の変遷を象徴するエピソードと言えるでしょう。
巫女と神主の違い
現代における巫女と神主の違いも興味深いポイントです。
神主になるためには、神社本庁などが定める資格を取得しなければなりません。
一方、巫女には特別な資格が必要ありません。
これは、巫女が補助的な立場に変わったことを反映しています。
しかし、巫女は現在も祭事で重要な役割を担い、日本文化の象徴的な存在であり続けています。
男性との関係は?
日本のシャーマニズムには、霊媒型(憑霊型)と脱魂型があります。
巫女は主に霊媒型ですが、説話の中には地獄や極楽を見聞する脱魂型のシャーマンも登場します。
興味深いことに、脱魂型の説話の主人公は男性である場合が多く、男性宗教者がこの役割を担っていたと考えられます。
脱魂型シャーマニズムは、修験道や密教などの宗教文化に影響を与え、異界と交信する特別な力として尊ばれてきました。
現代における巫女の役割
現代の巫女は、かつてのようなシャーマン的要素は薄れていますが、神社の祭事や儀礼で重要な役割を果たしています。
正月や七五三などの行事で見かける巫女の姿は、日本の伝統文化を象徴する存在です。
また、東北のイタコや沖縄のユタなど、民間信仰としての巫女文化もわずかながら生き続けています。
巫女の歴史を振り返ると、日本人の信仰心の変遷とともに、巫女という存在がいかに柔軟に形を変えながら受け継がれてきたかがよくわかります。
巫女さんのバイトはどんなの?
巫女さんのアルバイトの仕事内容
巫女さんのアルバイトは、神社の神事や参拝者の対応をサポートするのが主な仕事です。具体的には以下のような業務があります。
お守りやお札の授与
参拝者が購入するお守りやお札の対応をします。種類が多いため、事前に内容を覚える必要がありますが、丁寧に教えてもらえるので安心です。
参拝者の案内
初詣や七五三など、混雑する時期には参拝者の誘導や説明を行います。神社の雰囲気を大切にしつつ、丁寧な接客が求められます。
お祓いの受付補助
お祓いや祈祷を希望する参拝者の受付をサポートします。神事がスムーズに進むようサポートすることも重要です。
神社の清掃や準備作業
境内や社務所の清掃、神事の準備など、裏方の仕事も含まれます。
巫女さんのアルバイトの応募条件
巫女さんのアルバイトは、以下の条件を満たしている人が採用されやすい傾向にあります。
- 未婚の女性(神社の伝統的な考え方による)
- 18歳以上であること(高校卒業以上)
- 長時間立ち仕事ができる体力
- 清楚で丁寧な言葉遣いができること
- また、宗教的な知識が求められることは少なく、未経験者でも安心して応募できます。
必ずしもそうではないので、まえもって確認しておきましょう。
巫女さんのアルバイトは、特別な体験を通じて日本文化に触れられる貴重な機会です。興味がある方はぜひ応募してみてはいかがでしょうか?
さいごに
巫女という存在は、古代から現代に至るまで、時代の変遷とともにその役割や位置づけが変わってきました。
最初は神霊と直接交信し、政治や社会にも影響を与える重要な存在だった巫女ですが、中央集権化が進むにつれ、その役割は神社の儀式における補助的なものへと変化しました。
それでも、巫女は今なお日本の伝統や文化の中で重要な役割を担い続けており、祭りや神事でその姿を見ることができるのです。