「墓じまい」を考えた方がいい人と、避けるべき人

「墓じまい」を考えた方がいい人と、避けるべき人 お墓

毎年、増加傾向にある「墓じまい」

さまざまな理由でお墓を撤去する、いわゆる「墓じまい」をする人が多くなりました。

ところが、そのメリットばかり見てしまいがちなために、予想外なトラブルがおこってしまうことも増えてきています。

「墓じまい」は、本当にすすめていくべきなのでしょうか。

「墓じまい」を考えた方がいい人と、避けるべき人

近年、「墓じまい」をする人が増えてきました。

私も仕事がら、お墓に関する相談をよく受け付けますが、墓じまいに関する相談が増えてきているのは肌で実感するところでもあります。

ところが、失礼ながら人間とは愚かな生き物であり、特に仏事になると楽な方へ、簡単な方へと向かっていきがちになります。

それはきっと、日常生活の中における優先順位が低いからなのでしょう。

お墓に関しても、「あとはお寺が見てくれるから」「管理が楽だから」という安易な目先のメリットだけをみて、「墓じまいをしたい」と相談を持ちかけてくる方も、少なくありません。

こういう方が相談に来られた場合、私は正直に、「墓じまいを避けるべきである」とお伝えしています。

なぜならば理由は簡単で、お墓は自分だけの問題ではないからです。目先のメリットだけを見て安易に考えているようでは、あとトラブルが起こることがよくあります。

実際、管理が楽だからと合祀墓を選んだ方が、「たくさんの見知らぬ人が近くにいるとゆっくりお参りできない」と後悔をするというケースもありました。

お墓は代々受け継がれ、ひいてはその家系を支えているとかんがえることができる、大切なものです。

よくよく考えて選ぶようにしましょう。

墓じまいを考えるべき人

「お墓を継ぐ人がいない」

「高齢や病気で見ていくことができない」

このような人は、墓じまいすることを考えていってもいいでしょう。

お墓は大切だと考え、お墓をこれからも守っていきたい、けど、子どもや孫がいないという人。

自分が高齢や病気になってしまって、子どもも孫もいない、頼れる家族や親戚がいないという人。

つまり、自分が死んでしまうと「無縁墓」になってしまうという人は、墓じまいを考えてもいいでしょう。

墓じまいを避けるべき人

「子どもや孫に負担をかけさせたくない」

「周りに迷惑をかけたくない」

「お墓は維持管理が大変」

「経済的な負担が大きい」

このような考えをもっている人は、今のところは墓じまいをするのは避けるべきです。

墓じまいの相談で多いのが「子どもや孫に負担をかけたくない」ということ。

これはとても気持ちがわかります。定期的にお墓にお参りし、花を換え、掃除をし、管理費を支払う。このようなことを何年も続けていかなければいけないのです。

しかし、これが子どもや孫の負担になるかどうかは、当人たちの問題です。

「負担をかけたくない」と相談に来た人の息子さんに話を聞いてみると、「お墓を守っていくことは何の負担にも感じていない」と言われることも、少なくありません。

「それは大変さを知らないだけ」と言われることもありますが、大変かどうかは子どもや孫が自分たちで感じ取っていくことです。

また、墓じまいをすると、遺骨は手元から離れてしまいます。そして、二度ともとに戻すことができません。

本当にやむをえない事情でなければ、墓じまいをすることは避けておくべきです。

墓じまいでおこるトラブル

増加傾向にある墓じまい。だからこそ、トラブルも増える一方です。

墓じまいをする前には、事前によく話し合い、じっくり考えたうえで決めなければ、トラブルが発生して、かえって苦労が増えることにもなりかねません。

家族、親戚でのトラブル

墓じまいは、できるだけやむを得ない事情がある場合にのみするべきです。

しかし、「子どもや孫に負担をかけたくない」「経済的な負担がかかる」などの理由で墓じまいをすることも仕方ありません。

このような場合、必ずひとりで決めることなく、家族や親戚と相談してじっくり話し合ってから決めるようにしましょう。

お墓は自分のためだけのものではありません。子どもや孫、その次へと続く世代の人のためでもあるし、嫁いだ兄弟や姉妹のためのものでもあります。

これは実際にあったケースですが、ある男性が墓じまいをしようとしたところ、直前になってそれを聞きつけた妹さんが、「私が墓を見ていくから、墓じまいをしないでほしい」と言って頼みに来られたことがありました。

この妹さんは、結婚して嫁ぎ、名字も変わっています。自分が亡くなったあとは嫁ぎ先のお墓に入るつもりにしています。

しかし、墓じまいをしようとしていたのは、自分の実の両親が眠っているお墓です。そのお墓をとってしまうのは、とても心苦しい。自分が管理して見ていける間は、男性に代わってやっていきますとのことでした。

結婚して家を離れてしまったから、それで実家とのつながりが切れてしまうわけではありません。自分が思っている以上に、周りの人たちはお墓を残して守っていきたいという気持ちが強かったりするのです。

勝手に墓じまいをすることは、このような人たちの気持ちを無碍にすることにもなり、そこからトラブルになることも考えられます。

必ず、家族や親戚に相談してから決めるようにしましょう。

寺院とのトラブル

普段お世話になっているお寺がある場合は、お寺とのトラブルに気をつけるようにしましょう。

まず、墓じまいの際にはきちんとお寺の住職と相談するようにしましょう。

特に、公営墓地や民営墓地など、お寺の境内とは別の場所にお墓がある場合は、注意が必要です。

墓じまいをする前には必ず墓前でお勤めをしなくてはいけません。

それをせずに勝手に墓じまいをしたとなると、長年付き合ってきたお寺との関係が一気に壊れることにもなります。

また、「墓じまい」と「離檀(檀家を抜ける)」は別です。

これはお寺の境内に墓地がある場合に注意してほしいのですが、墓じまいをしてお墓をとってしまったあとも、お寺から護寺費などの請求がある場合があります。

これは、お寺では「墓地は撤去したけど、今までと変わらず檀家である」と考えているからです。

このような認識の違いから、寺院との間でトラブルになることも少なくありません。

よく話し合うようにしましょう。

関連記事「墓じまいでトラブル!?家族に相談せずにお墓を閉じたら思わぬ問題が・・・」では、実際に起ったトラブルを紹介しています。

参考にしてトラブルのないように気をつけましょう。

墓じまいは話し合いが大切

墓じまいの相談を受けた際、念を押して言うことがあります。

それは、「家族や親戚としっかり相談してください」ということ。

トラブルの原因の多くが、事前の話し合いをしていればよかったのにというものばかりです。

お墓は自分だけの問題ではありません。ご先祖様はもちろんですが、家族、親戚の問題でもあります。

墓じまいをする前に、しっかりと話し合うようにしましょう。

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