もしもの時のために、前もって準備しておくことを「終活」といいます。
終活をしていくなかで、「相続」について、子どもや孫、家族、親族にどのように残していくかをはっきりと残しておく必要があります。
これをしておかなければ、残された人の間でトラブルに発展してしまうケースがよくあります。
このようなことについて、残された人に残す書類を「遺言書」といいます。
ここでは、遺言書について、その書き方や書くときのポイント、効力などを紹介します。
遺言書について
遺言書とは、財産を所有する人が死後にその財産の処分方法や分配方法、誰に遺言書の指示を実行してほしいかを記した法的な書類のことをいいます。
言い換えれば、故人の最終的な意思表示を示す書類です。
遺言書があれば、本人の意思にそった形で残された人に受け継ぐことができます。
もしなければ、故人の残した財産に関して相続のトラブルが発生することがあります。
相続トラブルを起さないためにも、遺言書を残しておくことは大切なことです。
遺言書と遺書の違い
遺言書と遺書は、言葉が似ているから同じもののように見えてしまいますが、別のものです。
- 遺言書は遺産の分配などに関してその分け方を示した法的な書類
- 遺書は自分の気持ちを伝えるための手紙のこと
遺書に自分の財産の分け方について書いても、法的効力はありません。
遺産の分配などをしっかりと残しておきたいなら、遺言書を残しておきましょう。
ただし、遺書が遺言書としての要件を満たしている場合は法的効力が発生します。
遺言書の効力
遺言書は、原則的に作成した人が亡くなってから効力が発揮されます。遺言者が生きているうちは、財産に対して何の効力も生じません。
また、有効期限はありません。遺言者が亡くなって数年後に遺言書は発見されたとしても、その効力は発揮されます。
では、遺言書にはどんな内容を残すことができるのでしょうか。
誰に何を渡すのか指定できる
土地や家屋、家具、金銭など、所有している財産のうち、だれに何をどのくらい渡すのかを指定できます。
相続する権利を剥奪できる
遺言書を作成する人が特定の相続人から虐待や侮辱などの著しい不貞行為が認められた場合、それらを排除することによって、その相続人から相続する権利を剥奪することができます。
内縁の妻との子を認知することができる
内縁の妻とのあいだにできた子がいる場合、遺言でこれを認知することで、子として相続人に加えることができます。
遺言執行者を指定できる
遺言書の内容を執行する人を指定することができます。
相続財産の遺贈ができる
遺産を遺す相手がいない人の場合、遺言書を作成しておくと、遺産を法人や慈善団体などに寄付できます。
遺言書の種類
遺言は大きく分けて「普通方式遺言」と「特別方式遺言」の、ふたつの方式があります。
一般的な遺言となると、普通方式遺言です。
普通方式の遺言は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類に分けられます。
普通方式遺言
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言
特別方式遺言
・危急時遺言
・隔絶地遺言
代表的な遺言書は「自筆証書遺言」または「秘密証書遺言」です。
特別方式遺言とは、病気やケガなどで命の危険がせまっているとき、普通方式遺言を作成できない場合などにおこなう遺言のことです。
普通方式遺言の特徴とメリット、デメリット
普通方式遺言には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類あります。
それぞれにどんな特徴があるのでしょうか。
また、メリット、デメリットは何があるのでしょうか。
自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、自分で書いた遺言書のことです。
筆記用具があればいつでも作成できることから、特別な費用もかからず手続きも一番簡単な方法です。
しかし、自筆証書遺言には細かい決まりがあり、ひとつでも間違いがあると法的効力がなくなってしまいます。
メリット
- 手軽に作成できる
- 費用がかからない
- 何度でも修正や書き直しができる
- 内容を秘密にできる
デメリット
- 不備があると公的効力が無効になる
- 紛失の恐れがある
- 争いのもとになりやすい
- 発見されないリスクがある
- 隠蔽、破棄、変造されるリスクがある
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場の公証人に作成してもらう遺言書のことです。
原本を公証役場で保管する方式なので紛失の恐れもなく、法的に最も安全で確実です。
メリット
- 形式上の不備で無効になることがない
- 遺言の存在と内容を明確にできる
- 公証役場で保管するので、紛失、変造、偽造、破棄の恐れがない
- 家庭裁判所の検認が不要
デメリット
- 作成費用がかかる
- 作成するのに手間がかかる
- 証人が2名以上必要
秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、封をして中身が開けられない状態の遺言書です。
自分以外の他の人物に中身を見られることがないので、相続に関して知られたくない情報がある場合には、この方法をとるのがいいでしょう。
メリット
- 遺言の内容を秘密にできる
- パソコンでの作成が可能
- 代筆可能(ただし、署名は遺言者本人が行う)
- 公証人への手数料が公正証書遺言に比べて安い
デメリット
- 作成費用がかかる
- 作成するのに手間がかかる
- 公証人と2名以上の証人が必要
- 発見されないリスクがある
- 形式不備により無効となるリスクがある
遺言書の検認
遺言書の検認とは、遺言書の発見者や保管者が家庭裁判所に遺言書を提出して、相続人立ち会いのもとに開封し、遺言書の状態や内容を確認する手続きのことです。
「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」に検認が必要です。
検認しないとどうなるのか
検認する目的はふたつあります。
- 相続人全員に、遺言の存在と内容を知らせる
- 遺言書の内容を明確にし、偽造、変造、破棄を防止する
検認しないと、民法第1005条により、5万円以下の過料が科せられる場合があります。
遺言書と思われるものが自宅などから発見された場合には、勝手に開封することがないように気をつけましょう。
遺言書の書き方
遺言者本人が書く自筆証書遺言は、財産目録以外はすべて遺言者本人が書く必要があります。
代筆を行ったり、パソコンで作成すると無効になります。
筆記用具があれば誰でも作成できるので、特別な手続きも必要ないため、とても手軽に作成できる遺言方法といえます。
ただし、書き方を間違えると効力が無効になる可能性もあるので、作成時には注意が必要です。
自筆証書遺言の書き方とポイント
自筆証書遺言は、書き方を誤ると無効になる場合があります。遺言を書くときには以下のことに注意しましょう。
- 手書きで作成する
- 作成日時を記載する
- 署名と押印をする
- 書き直しには訂正印を押す
- 相続内容を明記する
- 複数枚ある場合は契印を押す
- 代筆による作成はできない
自筆証書遺言は、手書きで本人が作成をしなければいけません。パソコンで作成したり、誰かに頼んで書いてもらうなどした場合は無効になります。音声による作成もできません。
書類には作成日を正しく書き、必ず署名と押印をするようにしましょう。
また、訂正するときは二重線をひいてその上から訂正印を押して訂正します。訂正の方法を間違えると、無効になります。訂正する場合は、改めて遺言書を作り直した方が無難かもしれません。
相続内容はしっかりと明記しましょう。「だれに」「何を」「どれくらい」相続するのか明記しなければかえってトラブルのもとにもなります。
最後に
遺言について紹介しました。
遺言は、もしものときに遺された人たちがトラブルにあわないために、前もって用意しておくのがいいでしょう。
しかし、形式に従って正しく作成しなければ、無効になる場合があります。
気をつけて作成するようにしましょう。