お盆とは?お経からわかる本当の意味や歴史、由来、供え物について

お盆とは?お経からわかる本当の意味、由来、供え物について 生活

「盆はうれしや別れた人も晴れてこの世に会いに来る」

と昔から言うように、お盆になるとご先祖様が帰ってくると考えられ、各地でお盆にまつわる行事が行われます。

ネットで調べてみると、「お盆」に関連した情報があまりにも多くあふれていて、いったい何を信じたらいいのか分からなくなってしまいます。

そこで、現役の僧侶である筆者が、お盆について本当の意味、由来、歴史、飾り方を、お経をもとに紹介します。

お盆とは?

お盆とは、「盂蘭盆会」を略した言葉です。

先祖や亡くなった人たちの霊が灯りを頼りに帰ってくると考えられており、先祖の魂を家に迎え入れるための行事として現在でも盛んに行われています。

お盆の歴史

「盂蘭盆会」とは、7月15日に餓鬼道で苦しんでいる死者を救うために行われる仏教行事で、飛鳥時代に中国から伝わりました。

奈良時代の733年からは、宮中の行事となり、日本でも現在まで長く続けられる行事となっています。

この盂蘭盆会が、日本で古くから行われていた魂祭(先祖の霊を祀る行事)と結びつき、現在も行われているような先祖の霊を供養するお盆になったといわれています。

お盆の期間は?

お盆は現在も旧暦の7月にあたる8月13日から15日に行われることが多いです。

一般的には13日にお墓参りをして、迎え火を焚き先祖の霊を迎えます。

これを「迎え盆」といい、反対に送り火を焚いて霊を送るのが、15日の「送り盆」です。

「送り盆」は江戸時代までは8月16日に行われていました。

お盆の行事である京都の「大文字送り火」が8月16日の夜に行われているのは、この習慣に習ったものです。

また、地域によっては「迎え」「送り」の期間が違います。

必ず自分の地域の習慣を菩提寺などに確認し、その習慣にならってお盆の行事を行うようにしましょう。

一般的なお盆の祀り方

先祖の霊を迎えるために13日の朝に精霊棚を作り、その奥の中央に先祖の位牌を置きます。

位牌の前には、きゅうりやなすで作った馬や牛を供えます。

「きゅうりの馬」は、ご先祖様がこれに乗って早く帰ってきてくれますようにという願いが。

「なすの牛」は、ご先祖様が帰るときはこれに乗ってゆっくりと帰っていきますようにという願いがこめられています。

14日、もしくは15日に僧侶を家に招き、お経があげられ、供養が行われます。

お供え物は、13日はおむかえ団子、14日はおはぎ、15日はそうめん、16日はおくり団子と日によってお供え物を変えていきます。

しかし先にも言ったように、これらの風習は地域によって様々で宗派によっても異なるので、これが正式というわけではありません。

必ず地域のや菩提寺の習慣にそって行うようにしましょう。

「お経」に説かれるお盆の内容

現在日本でおこなわれている「お盆」の行事は、仏教のお経に説かれている教えと、日本古来の習慣が合わさったものです。

ここからは、お経をとおして本当のお盆の由来についてみていきましょう。

お盆のもとになったお経

日本の伝統行事として定着している「お盆」は、古くは『盂蘭盆経(うらぼんきょう)』というお経がもとになっています。

現在日本で行われている「お盆」の様子は、このお経とは少し違うものになってしまっていますが、それでも行事の中心となるものです。

『盂蘭盆経』の内容

お釈迦様の弟子に、目連という人がいました。

目連は神通力という不思議な力を得たので、自分を育ててくれた父母の恩に報いるために父母をさとりの世界に導こうと考えました。

そして神通力を使ってあらゆる世界を見渡したところ、亡き母は餓鬼道という苦しみの世界に落ちていました。

餓鬼道は、水を飲むことも食べ物を食べることもできない世界で、母は餓鬼道で骨と皮だけになって苦しんでいたのです。

哀れに思った目連は、神通力を使って母の前にご飯を用意しましたが、食べようとすると飯がもえてしまって炭となり、とうとう食べることができませんでした。

目連は嘆き悲しみ、お釈迦様のところにいってこのことを相談しました。

するとお釈迦様は「あなたの母は生前の罪が深く、そなた一人の力ではどうすることもできない。しかし、たくさんの僧侶たちの力を借りるならば、母は苦しみから解放されるだろう」というのです。

そして「今度の7月15日、夏安居(僧侶たちの研修合宿)の最終日に、七代さかのぼる先祖と父母のために、たくさんの食事を盆器にいれて、僧侶たちにさしあげなさい。そうすれば現在の父母から七代さかのぼる先祖にいたるまで、みんな苦しみから解放されるだろう」とその方法を教えられました。

目連がお釈迦様が言うとおりにすると、亡き母は餓鬼の苦しみから解放されることができたのです。

そして、未来世の人々も同じようにたくさんの食べ物を捧げることで、現在の父母とご先祖様の幸せを願うべきであると説かれるのです。

お盆が8月15日に行われる理由

先の通り、夏安居(僧侶の研修合宿)の最終日である7月15日に、たくさんの食べ物を捧げなさいと説かれています。

お盆が8月15日に行われる理由は、これがもとになっています。

7月15日は旧暦なので、現在は8月15日におこなわれているのです。

ただし、地域によっては7月15日に行っているところもあります。

日本の民間信仰としての「お盆」

日本の「お盆」の行事は、こうした『盂蘭盆経』の内容とは違った形で行われています。

実は仏教伝来の前から、民間信仰としてこのような行事が行われていました。

先祖の霊魂を「あの世」から「この世」にお迎えし、おもてなしをした後、期間を過ぎれば再び「あの世」に送るのです。

この期間が、ちょうど7月ごろだったので、仏教の『盂蘭盆経』の教えと合わさり、日本独自の今のお盆の行事として定着していったといわれています。

ご先祖様の幸せを願うという点では同じですが、『盂蘭盆経』の中にはご先祖様をお迎えしたり送ったりするようなこと説かれていません

日本古来の民間信仰と密接に関わり、融合していったことで、現在の日本の「お盆」が出来上がっていったのです。

「盂蘭盆」の本当の意味

「盂蘭盆」とは古代インドの言葉で「ウランバナ」の音写であり、「倒懸(逆さづり)」という意味がある。

という話を聞いたことがある人は、多いのではないでしょうか。

実はその説は、現在では誤りであると考えられています。

「盂蘭盆」の本当の意味は、食べ物などを盛り付けるための器、すなわち「お盆」「盆器」のことをいうのです。

『盂蘭盆経』には「飯百味と五果をそなえて盆器に汲みそそぎ、香油、錠燭(ていしょく)、床敷と臥具は世の甘美を尽して、以て盆中に著けよ」とあります。

明らかにお供え物を「盆器」に盛り付けることを意味しています。

また別の部分では「百味飲食を以て盂蘭盆の中に安んじ、十方自恣僧に施す」と出てきます。

ここでも「盆器」を表していることがわかります。

これ以外にも『盂蘭盆経』の中では「盆」「盂蘭盆」を、お供え物をいれる器としての「盆器」の意味で何度も使われています。

また「盂」も「盆」も、どちらの漢字にも「皿」を部首にもちます。

辞書で意味を調べても

「盂」わん、めしを盛るわん

「盆」はち、水を盛る鉢

などと出てくるように、器を意味するものであることがわかります。

こうしたことから、「盂蘭盆」とは食べ物などを盛り付けるための「お盆」「盆器」を意味している言葉だということがわかります。

お盆のお供え物

さて、それではお盆には何をお供えしたらいいのでしょうか。

ここでも『盂蘭盆経』にそって紹介します。

先にも出ましたが、お経の中には「飯百味と五果をそなえて盆器に汲みそそぎ、香油、錠燭(ていしょく)、床敷と臥具は世の甘美を尽して、以て盆中に著けよ」とあります。

  • 飯百味
  • 五果
  • 香油
  • 錠燭
  • 床敷
  • 臥具

を供えなさいというのです。

飯百味

飯百味とは、別に百味の飲食ともいわれるように、ありとあらゆる食べもののことをいいます。

たとえば

  • 米、麦、あわ、ひえ、キビ、豆などの穀類
  • イモ、カボチャ、なす、きゅうり、とまと、にんじんなどの野菜類
  • わかめ、こんぶ、ひじきなどの海藻類
  • そうめん、お吸い物、味噌汁などの加工品

などなど、考えられるありとあらゆる食事をお供えします。

五果

五果は五種類の果実のこと。

一般的に

  • すもも
  • あんず
  • なつめ

とされています。

果物がこれにあたると考えていいでしょう。

香油

お香のこと。

今の様に線香を作る技術が発達する前は、香りのついた油、香水の様なものを身につけていました。

香りは仏さまの一番の好物であるとされています。

お盆の時くらいは、少し上等なお香を捧げるのがいいでしょう。

錠燭

錠燭は灯明、明かりのことで、今ではろうそくのことです。

ろうそくの明かりは、仏さまの智慧を表し、迷いの闇の中にいる私たちを導いてくれる役割を持っています。

仏さまに向かうとき、お仏壇に手を合わせるときには、必ずろうそくに明かりを灯しましょう。

床敷、臥具

床敷は字のごとく床に敷く敷物のこと。

臥具は寝具のこと。

どちらも昔は高級品、嗜好品でした。

一般の人が自分では使わないようなものを用意して仏さまに捧げることで、より一層の気持ちをあらわしたのです。

最後に、大切な注意事項!

ここまで、『盂蘭盆経』にもとづいたお盆の意味や由来、お供え物について紹介しました。

紹介したとおり、仏教の行事であるとともに日本古来の民間信仰が合わさって、現在の「お盆」の習慣が行われています。

その結果、お盆の習慣について地域やお寺、家ごとに少しずつ違います。

ここで紹介したから、あるいはネットで調べて見たからといって、これが正しくてこれが間違っているなどということはありません。

どれも正しいものです。

情報のすべては、ほんの一説にすぎないと考えてください。

必ず家族や近所の人、お寺さんに確認し、その地域の習慣、家の習慣、お寺のやり方にそって行うようにしましょう

タイトルとURLをコピーしました