「自分が本当にしたいことがわからない」
「他人の目が気になってやりたいことができない」
そんなことがよくあるのではないでしょうか。
しかし、生きる上で自分がしたいことができないというのは、本当にもったいないことです。
自分がしたいことができない理由に、自分の本心を押し殺してしまっているところにあります。
自分に正直に生きていくために、本心で生きていくコツを紹介します。
自分に正直に生きる
自分に正直になれない人の多くは、優しい人ではないかと思うのです。
相手のために、他人のためにといって、自分のたりたいことを後回しにし、結果的に自分のことがわからなくなってやりたいことができなくなるというのは、よくあることです。
他人のために努力することはとても大切なことです。これを否定するわけではありません。
「他人のために働くことが私がやりたいことだ」と思って、一生懸命働いている人もたくさんいるでしょう。
しかし、そこに生きがいを感じなければ、きっとそれは自分のやりたいことではないのです。
「今のままでいいのか」
「このまま人生が終わってしまうのか」
そんな悩みや虚しさなどを感じたときにこそ、自分に正直になる時なのです。
本心と出会う
ひとつお話を紹介します。
僕の友人の話です。
彼は、起業したものの、背伸びをして実力以上に見せようとしたようで、さまざまな問題に巻き込まれ、結果、1億円の借金を背負うことになりました。
20 代で1億円の借金。どう考えても、返す方法が浮かばなかった。
保険に入り、車の運転中に、対向車線のトラックに飛び出そう。事故に見せかけて、自分の命を犠牲にして、1億円を返すしかない。
それが彼が出した結論でした。
冷静に考える力が、彼にはもう残っていなかったのです。
対向車線から勢いよく走りくるトラック。
でも、飛び出せない。
今度こそ。
でも飛び出せない。自分は飛び込む勇気すらないのか……。そんな日々が続いた。
でも、今日こそ飛び出そう。これまでは、あれこれ考えすぎて、恐怖に飲み込まれてしまった。今度は、何も考えずに無心でトラックに突っ込むんだ。
来た。あのトラックに飛び込もう。今度は無心で。
すると、ついに彼はアクセルを踏みこむことができた。
その瞬間、いつもは見えなかったトラックの運転手の表情がはっきり見えた。
運転手は、しあわせそうな表情をしていた。
彼は急ブレーキを踏んだ。
そうだ! そうだった!!! 彼は当たり前のことにようやく気づきます。
トラックの運転手にだって、家族はいるんだ!
このとき、「頭って勝手だな」と思ったそう。
「成功したい」「有名になりたい」「自由になりたい」とずっと思ってきた。でも、いざ事業を始めたら、失敗して1億円の借金。今度は、お金を返せないから、死んで楽になりたいと頭は考えている。あれだけ成功したいって思っていたのに。頭はなんて自分勝手なんだ……。
命より大切なものなんかない。やっと彼は冷静に戻ることができたのです。
トラックに突っ込むのをあきらめ、彼は自宅に戻りました。
家には、生まれたばかりの息子さんがいました。
気づいたら、夢中で子どもの絵を描いている自分がいたそうです。
古民家で、丸い座布団に座り、子どもを抱きしめている絵。
絵の隣には、もし明日に希望があるならと、明日やりたいことを書いた。
「明日も、こうして、子どもを抱きしめたい」
「明日も一緒にご飯を食べたい」
「普通に、笑顔で暮らしたい」
書きながら、涙が出ていた。
彼は死と向き合うなかで、これまで頭の声にかき消されていて聞こえなかった「ハートの声(本心)」と出会ったのです。
自分のほんとうの願いは、成功することじゃなかった。有名になることでもなかった。
「明日も、こうして、子どもを抱きしめたい」
「明日も一緒にご飯を食べたい」
「普通に、笑顔で暮らしたい」
これが彼のほんとうの願いだった。彼は、「頭」が求めているものと、「心」が求めているものが違っていたことに気づくのです。
昼間働き、夜は吉野家でバイトして、借金は一生かけて返していけばいい。
「楽になりたい」ってだけで死を選ぼうとしていた「頭」の身勝手さにバカらしくなり、彼は死ぬのをやめた。
現実の状況をありのままに受け入れた彼は、そこから今日やれることを、手を抜かず一つひとつやっていきました。すると、見事に復活。いまや本を4冊も出版するほど活躍されています。
『一生を変えるほんの小さなコツ』(かんき出版)の著者、野澤卓央さんのお話です。
あした死ぬかもよ? 人生最後の日に笑って死ねる27の質問 [ ひすいこたろう ]
死を前にしたとき、大切ではないものはすべて消えてしまうのです。
そして、そこに残されたものこそ、本当に大切にしなければならないものなのです。
これこそが、自分の本心といえるのです。
もし今日が人生最後の日だとしたら
アップルの創業者であるスティーブ・ジョブズ。
彼こそ、死を最大に活用した人であったといえるでしょう。
スタンフォード大学でのスピーチで、このような言葉を残しました。
私は 17 歳のときにこんな言葉と出会った。「毎日を人生最後の1日だと思って生きていこう。そうすればいつの日か必ず間違いのない道を歩んでいることだろう。やがて必ずその日がやってくるから」。それはとても印象に残る言葉で、その日を境に 33 年間、私は毎朝、鏡に映る自分にこう問いかけることを日課にしてきた。
「もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていることをするだろうか」と。「違う」という答えが何日も続くようなら、生き方を見直せということです。
あした死ぬかもよ? 人生最後の日に笑って死ねる27の質問 [ ひすいこたろう ]
死があるからこそ、命の尊さに気づくことができるのであり、命の使い方に真剣になれるのです。
自分が死ぬ身であるということを日頃から意識しているからこそ、ここ一番の大事な場面で、人のためにその命を投げ出せたのです。
自分に正直に生きるためにしてほしいこと
「死」を意識する
本心で生きていくためには、「死」を意識することがとても大切です。
「自分は必ず死ぬ」ということを意識せず、まだまだ長生きできるんだと思うから、「今日一日くらい」「また明日頑張ればいいや」という気持ちが起こるのです。
「また明日」と思っていては、いつまでたっても自分に正直にはなれません。
自分に正直になれないということは、生きがいのある人生を送ることができないということに等しいのです。
「明日死ぬかも知れない」という思いをもっていれば、このままの自分ではいけないということに気がつくでしょう。
死を意識することで、ようやく本心が見えてくるのです。
「死を見ない」というのは「ありのままを見ない」ということです。
ありのままを見ないということを仏教では「煩悩」と呼びます。
煩悩は自分自身を悩ませ苦しませるもとになるもので、これを排除しなければ本当の幸せはやってきません。
「ありのままを、ありのままに見る」
「自分自身の本心を見る」
どちらも同じことではないでしょうか。
これこそが、自分に正直に生きていくためのきっかけになるのです。
自分らしい最期を迎えるために
「あなたは、あした死にます」
と言われて、何を思うでしょうか?
自分のこれまでを振り返ってみて、満足いく人生だったと思えるでしょうか?
自分の本心で生きてきたでしょうか?
もし後悔するようならば、きっとそれは自分に正直に生きていない証拠です。
自分らしく生きていない証拠です。
自分の本心で生きていない証拠です。
「死」は誰にも等しく訪れるもの。
死を意識することこそ、自分に正直に、本心で生きがいのある人生を送るために大切なことなのです。
自分らしい最期を迎えるために、今こそ一歩踏み出しましょう。