「終活」とは、自分が病気で突然倒れてしまったり、万が一にも急に亡くなってしまったときに、遺された家族や周りの人たちに迷惑がかからないように前もって準備しておくことです。
また、こうした準備を通して生きている今を見つめ直すことで、残された時間をよりよく有意義に生きていくことができます。
「死後の準備」というマイナスイメージの大きい終活ですが、本当の目的は死後ではなく、死を目前に据え、死ぬまでの将来にあります。
つまり終活とは、「将来の準備」ということなのです。
ここでは、終活でやることをまとめてリストアップしているので、準備しておくことやコツ、はじめ方など、今からチェックして確認し、将来のために備えておきましょう。
また、終活のメリットとデメリットも紹介しているので、コチラもあわせてご確認ください。
終活とは
「終活」という言葉がはじめて登場したのは2009年、週刊朝日のコラムのなかで使われたのが最初だといわれています。2012年には流行語賞にノミネートされ、現在では「終活」という言葉は広く世の人たちに知れわたっています。
終活とは、人生最期のときを意識しつつ、「もしも」に備えることで残された人生を有意義に過ごしていくための活動です。
「もしも」にそなえて、将来の準備をしていくことで、よりよい人生を過ごすようにしていきましょう。
終活の背景
終活がブーム化した背景には、一人暮らしの増加があります。2035年には人口の約半数の人が独身者になると予想されています。
子どもの同居世帯が減少したことや、結婚しないことが珍しくない世の中になり、自然と一人暮らしの高齢者が増えました。
今までは子どもや孫と一緒に暮らして生活をし、何かあればすぐに家族を頼ることができました。しかし、一人暮らしとなると、これまでのように簡単に頼ることができなくなります。
さらに、高齢者の寿命も延びており、自分の最期のときを真剣に考える人が多くなりました。
そんななかで、「子どもに迷惑をかけたくない」「自分の意思をしっかり伝えて、納得のできる最期を迎えたい」と考える人が増えてきました。
このような老後の不安が、「終活」に拍車をかけているのです。
なぜ終活をするのか
なぜ終活をするのか?それはきっと人それぞれに理由があるでしょう。
ここでは大きく2つの理由をあげます。
- 家族や親戚など、周りに迷惑をかけないため
- 自分自身を振り返り、残りの人生を充実させるため
人はいつ死ぬかわかりません。それは30年後かもしれないし、10年後かもしれないし、1年後かもしれません。もしかしたら、今日の晩に寝て明日目を覚まさずにそのまま死んでしまうということも、全くないともいいきれません。
もし自分が突然死んでしまったとき、自分の財産や気持ちはどうなるでしょうか。
そうした準備をしておかなければ、残された家族はどのように対応すればいいかわからず、困ってしまうことになります。
また、死を意識することで、残りの人生をどのように生きていかなければいけないかという意識が強くなり、かえって有意義な生活を送ることができます。
ネガティブなイメージのある終活ですが、実は人生においてとても重要な役目を持っているのです。
終活はなぜ必要か、その重要な理由と具体的な事例を紹介しているので、終活を始める前に確認をしておきましょう。
終活「やることリスト」
ここでは、終活でやるべき10の事について紹介します。
- エンディングノートを作る
- デジタルデータの整理
- 生前整理
- 遺言書の作成
- 資産の見直し
- 医療について
- 介護の準備
- お葬式の準備
- お墓に関すること
- 健康で長生きすること
エンディングノートを作る
終活では考えるべきことが多くありすぎて、何から手をつけていいかわからなくなりがちです。そのため、将来のために準備しておきたいと思いながら、結局何も始めることができていないという人がほとんどです。
終活は「エンディングノート」を書くところから始めましょう。
エンディングノートは、「自分の人生の最期を、どのように迎えたいのか」を考えるためのガイドブックです
葬儀やお墓をどうするかなどの死後に関することに限らず、医療、介護、財産、保険、スマホやパソコンなどのデジタル機器のパスワード、さらには残される家族に対するメッセージなど、自分の情報や気持ちを一冊のノートにまとめておきましょう。
「自分はまだそんな年齢じゃない」「自分が死ぬことを考えたくない」という人もいるかもしれません。
しかし、人は必ず死を迎えます。人それぞれに、他人には隠しておきたい情報や、本当は伝えなければいけない情報などがたくさんあります。
突然、自分が死んでしまったとき、隠しておきたい情報を見られて家族間がトラブルに発展したり、伝えるべきことが伝えられなかったことで家族が困ったり、努めていた会社に支障がでたりするケースも少なくありません。
残される人たちのためにも、エンディングノートに必要な情報を書き出して記録しておくことはとても重要なことです。
また、エンディングノートを書くことで、自分自身の情報や心の中の気持ちを見える化することができます。こうすることで、今、自分が本当に必要なことが改めて見えてきます。
こうすることで、自分の情報整理だけでなく、残された人生を後悔することなく生きていくことができます。
残される周りの人に迷惑をかけないために、また後悔しない人生を送るためにも、まずはエンディングノートを書くことからおすすめします。
エンディングノートの書き方については、コチラを確認してください。
エンディングノートには、たくさんの商品が販売されています。ノートによって、それぞれの特徴が違います。もしかしたら、何を買えばいいのかわからない人もいるかもしれません。
エンディングノートのおすすめ10選を紹介していますので、購入の際には参考にしてください。
デジタルデータの整理
「デジタル終活」という言葉があります。これは、デジタル機器に焦点をあてて、終活を勧めていくことをいいます。
一般的にデジタル遺品といわれるものを整理しつつ、終活全体を考えていきます。
本質的に、「終活」と「デジタル終活」との間に違いはありません。単純に整理するものの対象が変わるということです。
現代社会において、パソコンやスマホなどのデジタル機器は、仕事においてもプライベートにおいても必需品となっています。
しかし、もしものときに備えてデジタルデータを整理している人はいるのでしょうか。
「あなたは、スマホを残して死ねますか?」
これが合い言葉です。もし突然死を迎えることになったとき、スマホの中身を見られても問題がないでしょうか。
見られたくないものを見られてしまい、残された家族間でトラブルに発展してしまったというケースも実際にあります。
デジタルデータは
- 残さないと家族が困るもの
- 残すと家族が困るもの
- 残さなくても特に困らないもの
の3つにわけて、今のうちから整理をしておくようにしましょう。
「デジタル終活」今すぐやるべき理由と情報整理のコツについては、こちらをご覧ください。
生前整理
終活をしていく上で、自分の身の回りのモノを整理することを「生前整理」といいます。
残された家族が特に大変な思いをしているのが、「遺品整理」です。
大切な家族が亡くなり、葬儀をすませたあと、一段落つくまもなく遺品整理に追われる場合があります。アパートなどの借家に住んでいる場合は、特に急いで進めなければいけません。
しかし、故人の遺品を整理しようにも、何を捨てて何を残すべきなのか、その選択をする苦労は量り知れないものとなっています。
特に古い写真などの思い出が強いモノが出てきた場合、捨ててもいいのかどうか、遺族にとって判断できずに悩んでしまうケースが多くあります。
また、衣類などはとてもかさばり、ゴミ袋に何十個と詰め込んで処分しなければいけません。それどころか、自治体によっては一般ゴミとして処分することができず、業者に依頼しなければならなくなって、大きな費用がかかってしまうこともあります。
自分のモノは自分にしかわかりません。
もしものことがあったとき、家族に迷惑がかからないようにするために、前もって整理しておくことが大切です。
生前整理で必要なことは、次の4つです。
- モノの整理
- ココロの整理
- 情報の整理
- 整理の継続
終活で始める生前整理について、整理するモノやコツなど具体的な方法を紹介していますので、参考にしてください。
遺言書の作成
自分の持っている資産を、誰にどれだけ相続するかを、はっきり明確に残しておかなければいけません。そうしなければ、残された家族間でトラブルになりかねません。
遺族の間でのトラブルの多くが、資産の相続、お金に関することです。
このようなトラブルを防ぐために、「遺言書」を作成しておくといいでしょう。
エンディングノートなどでも、家族に対して気持ちを伝えることができます。何を書いてもいい、自由なノートなので、資産についても記載しておくほうがいいでしょう。
また「遺書」にも、自分の気持ちを書いて伝えることができます。
しかし、遺言書との決定的な違いは「法的効力」があるかどうかです。
遺書やエンディングノートに自分の財産の分け方について書いても、法的効力はありません。それどころか、かえってトラブルを招きかねません。
遺産の配分などをしっかりと残しておきたいなら、遺言書を残しておきましょう。
遺言書にも「普通方式遺言」と「特別方式遺言」があり、さらに普通方式遺言は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の三種類に分けられます。
それぞれの正式な形式に則って作成しなければ、遺言書が無効になる場合があります。
遺言書の書き方とポイント、効力については、コチラで紹介しています。遺言書を作成するときはしっかりと確認した上で作成するようにしましょう。
資産の見直し
遺言書を残すにしても、自分が今どれだけの資産を持っているか知っておかなければいけません。
また、資産を見直すことで、老後にどれだけの余裕があるのか、何にどれだけのお金を使うことができるのかを知ることができます。こうすることで、残りの人生を有意義に送ることができます。
- 預貯金
- クレジットカード
- 不動産
- 株式、投資信託
- 保険
- 人に貸しているお金、借りているお金
などなど、これらを洗いざらい調べ、見直すようにしましょう。
必要なければ解約をしたり、売り払ったりしてしまいます。
もし必要なものであっても、たとえば家や土地の権利書、保険の証書など、大切なものはできるだけ一カ所にまとめて保管しておきましょう。
預貯金の口座番号や、クレジットカードの暗証番号なども、わかる形で残しておくようにしましょう。
これらをまとめて記録しておくことができるのが、エンディングノートです。ノートひとつにまとめておけば、何かあったときでも家族は安心して対応することができます。
残された家族の多くが、故人の資産に関係することで苦労をしています。
土地や家を売ろうにも、権利書が見当たらないとか、お金を下ろそうにも口座番号がわからないとか、このようなケースが数多くあります。
資産の見直しは早くからやっておくべきでしょう。
医療について
今は健康であっても、突然の病気で寝たきりになってしまうかもしれません。あるいは、持病が突然に再発してしまうかもしれません。
体のことは、自分が一番よくわかっているものです。反対にいえば、たとえ家族といえども、自分の体のすべてをわかってもらうことは難しいのです。
もし突然のことにみまわれても、どんな薬を飲んでいるかとか、薬の場所を周りの人がすぐに把握することができれば、きちんとした処置ができるので、一命をとりとめる確率も高くなります。
さらに近年では、一人暮らしの人が多く、「孤独死」をしてしまう人もかなりあります。
自分が今、どんな病気をかかえていて、どんな薬を飲んでいるのか、あるいは、終末期にはどのような医療を望んでいるのか、今のうちに考えておくようにしましょう。
たとえば「延命治療」はその最たる問題だと思います。本人はその必要はないと考えていても、家族にとっては、たとえ寝たきりの状態でも一秒でも長く生きていてほしいと思うものです。
- 延命治療を希望するか、緩和ケアを希望するか、家族に任せるか
- 余命を教えてほしいか、病名のみ知りたいか、何も知りたくないか
- 臓器提供が可能であれば希望するか、希望しないか
などなど、前もってその意思をしっかり伝えておかなければ、口もきけない状態の中自分の意思に反した治療が行われてしまいます。
また、延命治療についても、それをするかしないかという問題は頭を悩ませます。終末期の受け入れと過ごし方「延命治療」はする?しない?を参考に、この問題にもしっかりと向き合うようにしましょう。
介護の準備
自分が高齢になり、万が一寝たきりになってしまったら、家族には大きな負担になります。
もし介護が必要になった場合に希望することを、エンディングノートなどにまとめて書いておきましょう。
- 要介護になった場合、在宅介護を希望するのか、老人ホームなどの施設での介護を希望するのか、家族にまかせるのか
- 介護費用に関して自分の年金や保険で賄ってほしいのか、家族にも費用を援助してもらいたいか
- 財産の管理は家族に任せるのか、後見人に任せるのか
などなど、介護に関する希望を今のうち家族に伝えておきましょう。
もし認知症になってしまうと、そのときにはもう正しい判断ができなくなってしまっている場合があります。準備は早くはいじめるほうがいいでしょう。
認知症の初期症状のチェックリストを紹介しているので、こちらで確認しておき、認知症の早期発見を心がけておくようにしましょう。
また、老後の治療や介護には、かなりの費用もかかってきます。それは家族の大きな負担になるでしょう。
介護にかかる費用は、総額で500万円ともそれ以上ともいわれています。
親の介護にかかる費用と現実については、コチラを参考にしていただき、実際にどれくらいの費用がかかるのか知っておくとよいでしょう。
お葬式の準備
死者を弔い、ほうむる際の儀式を葬式といいます。
人は亡くなると、僧侶を呼んで枕経を行い、つづいて通夜、葬儀、告別式を行い、火葬してお墓へ納骨をします。
近年では通夜や葬儀を行わず、直接火葬する「火葬式」が増えてきました。
一人暮らしの人が増えたと同時に、ご近所付き合いも昔ほど盛んではなくなり、それによって規模が縮小されてきています。
家族葬や火葬式など、小規模な葬儀は手軽で費用もかからない反面、デメリットも多くあります。
たとえば、家族葬にすることで葬儀の当日は家族で見送ることができますが、後から訃報を知った親戚の人や近所の人が仏壇にお参りしたいと家に訪問し、連日その対応に追われることがあります。
また、葬儀社のプランがわかりにくく、最初に聞いていた費用よりも追加費用が多くかかり、一般葬と変わらないほどの費用がかかってしまう場合もあります。
また、故人の希望にそって火葬式をしたものの、やっぱりきちんと僧侶を呼んで読経してもらいたい、故人の言うように散骨したけどやっぱりお墓で供養したい、というケースも少なくありません。
葬儀は「亡くなる側の人がどのように送られたいか」ではなく、「残された側の人がどのように故人を送りたいか」が大切です。
終活をする上でお葬式に関係することは、勝手にひとりですすめることなく、必ず家族とのあいだでしっかりと話し合いをするようにしましょう。
お葬式に関して、本当にやるべき大切な理由などは、こちらで紹介しているので、ぜひご確認ください。
お葬式に関する費用の話しや気をつけたいお金の問題についても紹介しています。トラブルになる前に、今のうちから考えておきましょう。
お墓に関すること
最近では、お墓を持たずに永代供養をしてお寺にあずけたり、海などに散骨をしたりする人が増えています。
また、これまで管理していたお墓を整理してしまう「墓じまい」も多くなってきました。
これらについても、管理が楽というメリットがあると同時に、デメリットもあるので注意が必要です。
たとえば、永代供養にすると管理はそのお寺や会社が管理をしてくれますが、会社が経営に行き詰まったとき、遺骨を移動させてほしいと突然いわれることがあります。
つまりは、突然の出来事にみまわれても、運営方法にしたがわざるを得ないのです。
また、散骨をしてしまうと手を合わせる場所がなくなってしまい、故人を身近に感じることができなくなってしまいます。
実は散骨をして後悔する人が少なくありません。
少しくらいは自分の近くに遺骨を残しておきたかったと感じている人が多いのです。
さらに、家族や親族の間でトラブルになることもよくあります。
勝手に墓じまいをしてしまうと、親戚の人がお参りできなくなり、困惑してしまいます。結婚をして嫁いだ女性の人が、「実家の墓が急になくなってしまった」と言って相談に来ることも珍しくありません。
自分でお墓を管理するとなれば、ある程度は自分の都合で管理していくことができます。反対に、あとになって「やっぱりやめておけばよかった」と思っても、どうにもならないというのが、永代供養の大きなデメリットではないでしょうか。
お墓に関するトラブルは、その時はよかれと思っていても、あとになってから起ることがほとんどです。
こうしたことを知らず、「楽だから」という理由で永代供養を選ばないように、家族や親戚の人としっかりと話し合いをした上で、考えるようにしましょう。
永代供養について、認識の違いが問題を引き起こすことがあります。永代供養の知られざる問題として、「納骨」「永代供養」「永代供養付き納骨」の違いについては、コチラをご覧ください。
「墓じまい」を考えている人は、まずは本当に墓じまいが必要かどうかを考えるようにしましょう。「墓じまい」考えた方がいい人と、避けるべき人については、コチラを参考にしてください。
健康で長生きすること
厚生労働省の資料によると、令和3年の平均寿命は 、男性が81.47年、女性が87.57年とされています。対して健康寿命となると、男性が72.6歳、女性が75.5歳、総合で74.1歳というデータが発表されています。
日常生活に支障のある期間が長くなればなるほど、医療や介護が必要な時間が長くなり、家族にはそれだけ大きな負担がかかってしまいます。
終活は、健康で長生きをすることが何よりも大切であると考えています。
できるだけ介護や医療で家族に負担を掛けないように、日ごろから体調には気をつけて生活をするようにしましょう。
いつまでも健康に生き続けていくためには、特に食生活には気を付けなければいけません。健康寿命をのばすために気をつけるべき食事の習慣があるので、参考にして健康寿命を延ばしていきましょう。
また、健康のためには肉体的な面だけでなく、精神的な面でも安定を保つように心がけましょう。心の不安定が肉体に影響を及ぼして、体調を壊すことも珍しくありません。
健康で長生きできるように、努力していきましょう。
最後に
終活は「死」を通して今の生き方を見つめ直すことができる、最高の活動だと思っています。
しかし、きちんと知らなければ、かえってトラブルに発展してしまうことも少なくありません。
ここでは終活をしていく上で、10の事についてまとめて紹介しました。
- エンディングノートを作る
- デジタルデータの整理
- 生前整理
- 遺言書の作成
- 資産の見直し
- 医療について
- 介護の準備
- お葬式の準備
- お墓に関すること
- 健康で長生きすること
大切なのは、しっかりと考えることです。「安いから」「楽だから」という理由で決めたことは、あとから後悔しているケースがほとんどです。
後悔しない終活にするために、じっくり、しっかり考え、家族でよく話し合って、みんなが納得のいく形で進めていくようにしましょう。